当教室の研究について

ポリファーマシー

I. ポリファーマシーとは?

「ポリファーマシー(polypharmacy)」とは、必要以上にたくさんの薬剤を処方され、患者さんが適切に管理・内服できない、薬剤による有害事象が出現しているなど、これらの薬剤を服用し続けることが患者さんにとって好ましくない状態をさします。

加齢とともに複数の病気や慢性的な症状を有するので、そのすべてに治療を行えば、自然と薬剤数が増加します。一方、高齢者は肝・腎機能の低下により、6剤以上の薬剤を用いると薬物関連有害事象を招きやすく、5剤以上では、転倒しやすいと報告されています。先進国では、高齢者の50%が常時5,6剤以上、10%程度が10剤以上内服しているとの報告があります。なかには、20種類以上の薬剤を内服している場合もあります。高齢者の常時使用薬剤が5,6種類以上になる場合は注意が必要です。

II. 医療者はどうすべきか? 3つのステップ

  1. 処方のレビュー

    患者さんが「どのような薬剤を何のために、どれくらいの量を内服しているか」を確認(処方のレビュー)します。複数の医療機関にかかっている場合は、処方されている薬剤の全貌を把握します。お薬手帳も参考になりますが、貼り忘れがあるため注意が必要です。

  2. 処方薬の評価と見直し

    治療優先順位の決定や有害事象の発生の有無、薬物相互作用、投与されているが無効どうかを評価し、必要に応じて減薬、薬剤の中止が必要(ストップ)です。逆に過小治療の場合には薬剤の追加を検討します (スタート)。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(日本老年医学会)」、「Beers基準 2015 (米国老年医学会)」、「高齢者の潜在的不適切処方スクリーニングのためのストップ(STOPP)/スタート(START)基準 ver. 2(英国老年医学会)」が参考になります。見直しには、患者さんの有する3つの処方継続の困難さ(認知機能低下(dementia)、嚥下障害(dysphagia)、手足などの身体の障がい(other disability), 3D)にも配慮するとよいと思います。

  3. 減薬、薬剤の見直し後は十分な経過観察

参考
林 祐一:ポリファーマシー. 日本食品科学工学雑誌 2017; 64:517-518.
林 祐一:高齢者のポリファーマシーの是正と電子カルテシステムの役割.
医学のあゆみ 2017; 262: 726-727.