当教室の研究について

神経難病のコミュニケーション支援

はじめに

神経難病の中には、舌や咽頭、四肢の障害をきたし、今まで通りのコミュニケーションに支障をきたす患者さんが存在します。意思を伝えたり、感情や考えを共有することは「生活の質」に大きく影響するため、よりよい療養生活を送る上で非常に重要です。

当科では、多系統萎縮症などの神経難病のコミュニケーション支援に積極的に取り組んでいます(随時コミュニケーション評価・支援を行っておりますので、ご希望の方はかかりつけ医を通じ、当科外来受診予約をお願い致します(https://hosp.gifu-u.ac.jp/fukushi/introduction.html)。 

 

コミュニケーション支援

  1. 目的を明確化する

    本人の意向・ニーズを聴取し、どのような目的で(何を誰にどのように伝えるために)介入するのかを確認することが重要です。そのためには多くの支援者が関与することになり、早い段階から多職種連携が必要です。主治医(神経内科)、リハビリスタッフ、訪問看護師等、普段の生活で直接患者さんと関わる職種以外にも、難病相談支援センター、患者会、ITサポートセンターなどから情報を得ることも可能です。

  2. 機能の評価

    同じ神経難病でも機能障害は多様であり、また病期によっても変化します。医療スタッフが患者の多様性を理解し、適切に残存機能を評価することが大切です。またコミュニケーションがうまく成立しない場合は、意識障害、難聴などの耳鼻科的問題、高次機能障害の有無に関し確認することも必要です。

  3. 代替コミュニケーション機器の導入

    神経難病では、言語によるコミュニケーションに支障をきたすことが多く、代替コミュニケーション機器が有用です。音声代替装置として透明文字盤などのローテク物品、携帯用会話補助装置・重度障害者用意思伝達装置などのハイテク物品があります。支援機器情報は東京大学・学際バリアフリー研究プロジェクト(AT2EDプロジェクト)の公式サイトに一覧が掲載されています。

    なお、一つの機器を導入して終わりというわけではなく、これらの機器が実際に有用に使用できるかどうか、多職種で評価を行いフィードバックすることも重要です。機能障害や病期に応じて、機器を変更したり、組み合わせて使用するなどの柔軟な対応が求められます。

  4. 公的支援制度

    コミュニケーション障害の際に活用できる公的支援制度には、日常生活用具等の給付事業、補装具の給付(障害者総合支援法の自立支援給付)があります。具体的には、前者はパソコンソフトや周辺機器(オペレートナビ®や各種入力スイッチなど)、専用福祉機械(ペチャラ®など)の支給であり、後者は重度障害者用意思伝達装置(伝の心®、レッツチャット®など)が含まれます。

    一連のコミュニケーション支援の流れの詳細については、中部学院大学 井村保先生監修の「神経筋疾患患者に対するコミュニケーション機器導入支援ガイドブック」(http://rel.chubu-gu.ac.jp/ca-gb/)に大変わかりやすく記載されていますので、是非ご参照下さい。

参考文献
  1. 日本神経学会.筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン.P161-77. 2013
  2. 日本リハビリテーション工学会.「重度障害者用意思伝達装置」導入ガイドライン 2012-2013.(http://www.resja.or.jp/com-gl/gl/index.html
参考ホームページ
  1. 中部学院大学看護リハビリテーション学部理学療法学科ホームページ「いむらぼ」
  2. 東京大学・学際バリアフリー研究プロジェクト(AT2EDプロジェクト) エイティースクエアード