コラム

脊髄小脳変性症

2020.12.28

治療可能な抗mGluR1抗体脳炎は,孤発性小脳失調症の鑑別診断に加える必要がある

代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)は,興奮性神経伝達を媒介するGタンパク質共役型グルタミン酸受容体です.そのサブタイプのひとつmGluR1に対する自己抗体は病原性を有し,小脳スライスにおけるプルキンエ細胞機能を障害することが示されています.私達はこれまで亜急性の経過を示した純粋小脳性運動失調症を経験し,抗mGluR1抗体に対するcell-based assay法による測定系を確立して,この患者さんが抗mGluR1抗体脳炎であることを報告しています(Yoshikura N, et al. J Neuroimmunol 319; 63-67, 2018)(https://bit.ly/2KWh4s2).今回,スペインのDalmau教授らが,この症例を含めた30名の臨床像と治療,予後についてレビューし,①抗mGluR1脳炎は小脳症候群(フリー動画)であり,通常,数週間かけてピークに達する亜急性の経過を示すが,なかには持続的に進行する症例も存在すること,②通常,成人に発症するが,小児でもまれに発症し,舞踏病アテトーゼのような成人とは異なる症候を呈しうること,③発症時の重症度が予後を予測する因子であること,④免疫療法が有効な症例が存在するため,見逃してはならないことを示しています.治療可能であるため,その意義は非常に大きく,ブログ(https://bit.ly/2M6dvQl)に詳細を記載しました.亜急性発症で,小脳外徴候を示し,商業ベースの抗神経抗体が陰性の場合,ご相談いただければと存じます.
Spatola M et al. Clinical features, prognostic factors, and antibody effects in anti-mGluR1 encephalitis. Neurology Dec 2020, 95 (22) e3012-e3025(doi.org/10.1212/WNL.0000000000010854)

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