コラム

脊髄小脳変性症

2020.06.16

非遺伝性小脳性運動失調症の最前線 -Treatable cerebellar ataxia-

標題の総説を,日本内科学会雑誌の「医学と医療の最前線」に,当科吉倉延亮先生,木村暁夫先生とともに執筆させていただきました.多系統萎縮症を除く非遺伝性の脊髄小脳変性症はさまざまな病態が含まれると考えられているものの,その診断や治療についてのアプローチは確立されていません.当科では神経免疫学の立場からこの問題に取り組んでいます.従来にない面白い総説になったと考えておりますので,ぜひご覧ください.図は自己免疫性小脳失調症に対する我々のアプローチを示します.以下,抄録です(日内会誌109;1138-1144, 2020).

非遺伝性小脳性運動失調症に対し用いられる皮質性小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy:CCA)という名称は,本来は神経病理学的診断名である.近年,ヨーロッパや本邦から,臨床的な新たな疾患概念とその診断基準が提唱された.しかし,これらの症例の病態は均一ではなく,多様な疾患が混在する可能性がある.具体的には,多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)早期例(小脳系のみの変性を示す臨床亜型),稀な遺伝性疾患,そして,自己免疫性疾患が考えられる.我々は,自己免疫性小脳性運動失調症に着目し,本邦の非遺伝性小脳性運動失調症患者の血清中に存在する,抗代謝型グルタミン酸受容体1型(metabotropic glutamate receptor type 1:mGluR1)抗体をはじめとする抗小脳抗体を検出し,新たな診断法の確立に取り組んでいる.新臨床診断基準の導入,抗小脳抗体の検出と対応抗原の同定は,非遺伝性小脳性運動失調症に対する治療アプローチにパラダイムシフトをもたらす可能性がある.

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