コラム

パーキンソン症候群

2024.01.23

進行性核上性麻痺および特発性正常圧水頭症の合併例の臨床的特徴とシャント術の効果

進行性核上性麻痺(PSP)と特発性正常圧水頭症(iNPH)の両方の診断基準を満たす症例が少なからず存在します.シャント術が有効であった症例の報告もありますが,その病態は不明で,シャント術が有効である症例の頻度や,どのような症例で有効なのかも不明です.このような日常診療の疑問を見逃さず,答えを見出す取り組みが大切ですが,この問題に専攻医の山原直紀先生がトライしてくださいました(http://tinyurl.com/yllw2qbx).

両者の合併例13例を後方視的に検討した単一施設の研究です.PSPのうちiNPHにも該当したのは15.7%(13/83例:結構多い!)で,病型は全例PSP-RSでした(右図).シャント術は5/11例(45.5%)で有効,つまり有効例が少なくないことが分かりました.

つぎにシャント術が有効であった5例とその他6例の2群に分け,臨床・画像所見の比較を行ったところ,脳血流SPECTの前頭葉血流低下に有意差を認めました(P = 0.018;左図).3年以上,効果の持続している症例も2例認めました.

以上より,PSPとiNPHの合併例はPSP-RSが多く,シャント術の効果予測において脳血流SPECTが有効性である可能性が示唆されました.少数例を対象とした後方視的解析なのでエビデンスとしては弱いですが,シンプルな臨床研究でもアイデア次第で患者さんの治療に繋がっていきます.山原先生にはさらに頑張っていただきたいと思います.

山原直紀, 吉倉延亮, 下畑享良.進行性核上性麻痺および特発性正常圧水頭症の合併例の臨床的特徴とシャント術の効果.臨床神経2024(advance publication)
http://tinyurl.com/yllw2qbx(ダウンロードフリーです)

一覧へ戻る