コラム

パーキンソン症候群

2023.10.13

特発性正常圧水頭症に対するタップテストは施行後24~48時間後に行う!

特発性正常圧水頭症(iNPH)に対するタップテスト後の評価はどのタイミングで行っているでしょうか?「特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第3版」の「脳脊髄液排除試験」の項目にも適切な評価時間の記載はありません.教室メンバーに確認したところ,施行当日,もしくは2-3日後,複数回の評価をしているなどで統一はされていないようでした.ほかの業務の都合なども影響するのかなと思いました.

イタリアからiNPHに対する歩行解析のメタアナリシスが報告されています.527名の患者を含む17件の研究が選択されています.重要な点として,タップテストとシャント術による種々の歩行パラメーターの改善が示されています.興味深いのは「シャント術はタップテストと比較してより有意な改善を認めること」で,脳脊髄液ドレナージ時間の延長がiNPHの病態に対して,より良好な効果を及ぼすことが推測されます.

この研究で最も印象的であったのは,メタ回帰分析により「タップテスト後の歩行速度の改善は術後24~48時間でプラトーに達すること」が示されたことです. またタップテスト後の評価タイミングに関して,2~72時間と高度の異質性があること(バラバラであること)を示しており,冒頭で述べた評価時間が定まっていない現状を実証しています.いくつかの研究では,異なるタイミングでタップテスト後の評価を繰り返すことを提案しています.しかし,今回の研究結果から,プラトーに達する24~48時間後が最適なタイミングであると著者は述べていますので,このワンポイントで良いのかもしれません.少なくともテスト後90~100時間でベースラインに戻ることから,この時期はやめたほうが良いですし,テストの同じ日に効果を評価するというやり方もシャント術候補者を見落としてしまう可能性があります.少なくとも24~48時間の評価は1回行うべきと考えられます.
Passaretti M et al. Gait Analysis in Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus: A Meta-Analysis. Mov Disord Clin Pract. 19 June 2023 https://doi.org/10.1002/mdc3.13816

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