コラム

パーキンソン症候群

2023.08.12

可逆的な脳ドーパミントランスポーターシンチ異常(後編)

DAT-SPECTは,パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)などの診断に役立つ画像診断法です.岐阜大学チームは自己免疫性脳炎に伴うパーキンソニズムの2症例におけるDAT-SPECTの集積低下が免疫療法で改善しうることを報告しています(文献1, 2).ただし集積が回復する機序は不明です.

さてDAT-SPECT集積低下の改善を認めたうつ病5症例が鹿児島大学精神科から報告され注目を集めています.全例女性でカタトニアも認めました.Yahr 2度のパーキンソニズムを2名で,認知機能低下を3名で認め,2人はDLBの診断基準をprobableで満たしていました(ただしMIBG心筋シンチに異常はなく,レム睡眠行動異常症や嗅覚障害もなし).治療として抗うつ薬,ベンゾジアゼピン,カタトニアに対するロラゼパム,ECTが行われ,うつ症状,パーキンソニズム,認知機能障害は軽快しました.DLBの2名はいずれも診断基準を満たさなくなりました.同時にDAT-SPECTの集積低下も改善しました!

考察されることは以下の3点です.
1)5症例に認めたDAT集積低下は,うつ病よりもむしろカタトニアと関連している.逆にカタトニアの病態の一部に,線条体のドパミン作動性伝達障害が関与している可能性がある.
2)5症例におけるDAT集積低下は,恐らくαシヌクレイノパチーに伴うものではない.
3)集積低下が回復した機序は不明.

以上より,カタトニアでは可逆的なDAT-SPECT集積低下を認めることが示されました.DAT-SPECTで集積低下を認め,DLBを疑っても,カタトニアを合併する場合は,慎重に診断する必要があります.

1) Fuseya K, et al. Mov Disord Clin Pract. 2020 May 5;7(5):557-559.(doi.org/10.1002/mdc3.12957

2) Ono Y, et al. Autoimmune encephalitis presenting with atypical parkinsonism: A case report and review of the literature. Neurol Clin Neurosci 28 April 2023 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ncn3.12721

3) Arai K, et al. Aging-Related Catatonia with Reversible Dopamine Transporter Dysfunction in Females with Depressive Symptoms: A Case Series. Am J Geriatr Psychiatry. 2023 Jun 2:S1064-7481(23)00310-X.(doi.org/10.1016/j.jagp.2023.05.009

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