コラム

パーキンソン症候群

2020.04.20

治療可能な大脳皮質基底核症候群(CBS) ―抗IgLON5抗体関連疾患―

抗IgLON5抗体関連疾患という自己免疫性神経疾患があります(Lancet Neurol. 2014;13:575-86).IgLON5は神経細胞接着分子のひとつです.症候として閉塞性睡眠時無呼吸を伴う進行性non-REM・REMパラソムニア,運動障害(四肢の失調,舞踏運動,歩行不安定性),眼球運動障害を呈し,生命予後は不良です(8例中6例が免疫抑制療法にもかかわらず1年以内に死亡).2名の病理で,脳幹・視床に過剰リン酸化されたタウの沈着を認めました.抗IgLON5抗体は298名の対照では1名にのみ認められ,その1名はPSPでした.タウオパチーを考える上で興味を惹かれた論文でした.

このため私達はこの抗体のアッセイ系を確立し検討を進めたところ,何と大脳皮質基底核症候群(CBS)のなかに抗体陽性例を見出しました.4年の経過で進行する歩行障害を主訴とした85歳女性でした.四肢筋強剛,左半身の失行,左下肢ジストニア,皮質性感覚障害を呈し,画像検査では右半球優位の脳萎縮と血流低下を認めました.Armstrong基準のprobable CBDに該当しました.大量免疫グロブリン療法を3クール行ったところ,臨床症候と画像所見の改善を認めました.神経変性疾患と考えられたCBSのなかに,治療可能例が存在することを示した意味で,インパクトの大きい症例と考えられました.

Fuseya K, Kimura A, Yoshikura N, Yamada M, Hayashi Y, Shimohata T. Corticobasal Syndrome in a Patient with Anti-IgLON5 Antibodies. Mov Disord Clin Pract 2020 in press.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/mdc3.12957

図(A-D)はHEK293細胞にGFP-IgLon5融合蛋白(C)を一過性発現させるcell-based assay系.患者血清でのみ陽性に染色され(B),共局在する(D).凍結ラット小脳切片を用いた免疫染色では既報と同様の染色パターンを示す(E).頭部MRIでは右半球優位の脳萎縮を呈する(F, G).

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