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2020.11.04

自己免疫性GFAPアストロサイトパチー

先日行われた第38回日本神経治療学会の優秀演題に,当科の木村暁夫准教授の標題の疾患に関する演題が選ばれました!まだ認知度の高い疾患ではありませんが,岐阜大学病院では少なからぬ患者さんを診断,治療しています.抗AQP4抗体,抗MOG抗体陰性の髄膜脳炎,髄膜脳脊髄炎,脊髄炎であり,認知機能障害や排尿障害が多く見られます.また図のような検査・画像所見を認めます.以下,今回の抄録とこれまで報告した論文のリンクになります.疑う症例がございましたら,ご相談いただければと思います.

自己免疫性GFAPアストロサイトパチーの治療と予後の検討
木村暁夫,竹腰 顕,吉倉延亮,林 祐一,下畑享良

目的:自己免疫性glial fibrillary acidic protein(GFAP)アストロサイトパチー(GFAP-A)の治療と予後を検討する.方法:315名の中枢神経疾患患者の髄液を用い,Cell based assayによりGFAP-IgGを検索した.その後,抗体陽性患者の治療と予後を後方視的に検討した.結果:29名の患者で,髄液GFAP-IgGを検出した.年齢の中央値は52歳,男女比は17:12,臨床病型は,髄膜脳炎15名,髄膜脳脊髄炎13名,脊髄炎1名であった.免疫療法が28名(97%)で施行された.内訳は,ステロイドパルス26名,IVIg 6名,プレドニゾロン内服20名,デキサメタゾン点滴4名,アザチオプリン内服2名,単純血漿交換療法1名であった.7名で人工呼吸器の装着を必要とした.予後は,mRSの中央値が,入院時5,最終観察時1であった.一方,最終観察時のmRSが,3以上の患者が5名(17%)存在した.13名に後遺症を残し,認知機能障害と排尿障害を6名ずつ認めた.再発をきたした患者は1名であった.結論:GFAP-Aは,ステロイドに対する反応性は比較的良好であるが,約半数で後遺症を残し,認知機能障害や排尿障害が多く,治療後も17%の患者で日常生活に介助を必要とした.早期の診断とステロイド治療の開始が重要である.

J Neuroimmunol. 2019;332:91-98.(doi.org/10.1016/j.jneuroim.2019.04.004
J Neuroimmunol. 2019;334:576999.(doi.org/10.1016/j.jneuroim.2019.576999
Clin Exp Neuroimmunol. Aug 27, 2019(doi.org/10.1111/cen3.12538
Intern Med. 2020;59(21):2777-2781.(doi.org/10.2169/internalmedicine.5074-20

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