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2019.08.17

偏頭痛と片頭痛のいずれが正しいか?

朝のカンファレンスにて,学術的に「偏頭痛は間違い,片頭痛が正しい」という話をしました.片頭痛は英語で「migraine」と言いますが,もともと2世紀にギリシャの医学者ガレノスが「hemicrania」と名付けられたものが変化したと言われています(hemiがmiと縮まり,craniaがgraineとなまった).これを日本語に訳す際,hemiは片側という意味ですので「片頭痛」となりました.ですから学術的に「片頭痛」が正しく,論文もガイドラインもみな片頭痛が使われます.ではなぜ「偏頭痛」を目にするかというと,ワープロ変換で最初に「偏頭痛」が出てくるためです.この原因は広辞苑で「偏頭痛」が採用されたことが影響しています(現在は両者併記).ではなぜ「偏頭痛」が採用されたかというと,日本古来の文献をさかのぼると偏頭痛と記載されていたためのようです(1530年に成立した『清原国賢書写本荘子抄』には「偏はかたかたぞ.偏頭痛.正頭痛」という一文があります).おそらくこれは中国語の影響で,中国語では「偏」が「片側・半分」を意味し,「片」は「二つ揃いの一方,わずか」を意味するためのようです.このため中国語では現在も,偏頭痛(偏头痛)が用いられています.そう考えると偏頭痛も必ずしも間違いではない気もします.いずれにしても日本では学術的には片頭痛と記載することを認識する必要があります.
坂井文彦.「片頭痛」からの卒業.(講談社現代新書);福武敏夫.半側と片側.漢字から見る神経学(週刊医学界新聞2019年5月20日)

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