コラム

神経所見・検査所見

2024.01.24

片側眼瞼下垂と腱膜性眼瞼下垂 ―上眼瞼挙筋の筋力のみかた―

朝のカンファレンスでのミニ・レクチャーです.片側眼瞼下垂の診察で鑑別を要するのは,①まれではあるが生命にかかわる脳動脈瘤による動眼神経麻痺,②比較的よくある重症筋無力症,③頻度の高い腱膜性眼瞼下垂(aponeurotic ptosis)を正しく診断することです.ほかにはホルネル症候群,筋疾患,偽眼瞼下垂(眼瞼れん縮,開眼失行など)の鑑別も必要になります.神経所見としては瞳孔不同,対光反射,眼球運動障害,前頭筋の収縮や顔面神経麻痺の有無等を確認しますし,enhanced ptosisも調べて両側性眼瞼下垂がないかもチェックします.

腱膜性眼瞼下垂(加齢性眼瞼下垂)は筋や神経に異常がなくても,上眼瞼挙筋末端部の腱がさまざまな原因で伸びたりゆるんだりして生じるものです.片側性または両側性です.頻繁に眼瞼をこする人やコンタクトレンズ使用者によくみられます.よって危険因子として逆さまつげ,アトピー性皮膚炎,花粉症,コンタクトレンズ(ハードもソフトも),白内障手術後などが知られています.正しく診断し,希望があれば眼科または形成外科での手術を検討することになります.

他の疾患をきちんと除外した上で,挙筋機能が正常であれば診断ができます.つまり上眼瞼挙筋の筋力を評価するわけですが,成書には前頭筋の収縮をさせないようにさせ,下眼位から上眼位までの上眼瞼縁からの距離を測定するとあります.通常,12~17mmで,良好 8mm以上,可 5~7mm,不良 4mm以下との記載もあります(https://eyewiki.aao.org/Aponeurotic_Ptosis).ただなかなか前頭筋の収縮は強くて完全にその影響をなくすことは難しいのですが,私は図のように眉毛の上を指で抑えて,極力,額に力を入れないようにお願いして診察しています.

ただ最後まで鑑別に残るのはseronegativeな重症筋無力症で,カンファレンスではアイスパック試験までは行っているとの意見もありました.先生方は上眼瞼挙筋の評価,どうされておられますか?

参考 YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=tHaZdXsmvlQ

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