コラム

神経所見・検査所見

2024.01.19

「筋強剛+線維束性収縮」の組み合わせからどう診断・治療するか?

最新号のNeurology誌の動画です(オープンアクセス).82歳男性.2年間の経過で線維束性収縮,筋痙攣,筋強剛,不安定歩行を呈しました.球症状,認知症,睡眠障害なし.電気生理学的検査ではneuromuscular hyperexcitabilityを示唆する所見でした.脳脊髄液ではタウ蛋白↑(543pg/mL;<404)とオリゴクローナルバンド陽性を認めました(→自己免疫性タウオパチー).頭部MRI,FDG-PET,睡眠ポリグラフ検査で異常なし.ステロイドハーフパルス(500mg/d,5日間)とベンゾジアゼピン内服により,四肢の筋強剛や歩行は急速に回復し,以後,6ヵ月間悪化はありませんでした・・・・

診断はIgLON5抗体関連疾患で,血清と脳脊髄液を用いたcell-based assay(CBA)で抗体陽性でした.この疾患は以下のようなサブタイプを呈しますが,最後のものになるかと思います.

1)睡眠障害型(REM,non-REMパラソムニア,睡眠関連呼吸障害)
2)球麻痺症候群型
3)運動異常症型(PSP様症候群,CBS,小脳症候群;MSA様)
4)認知症型(+舞踏運動)
5)神経筋過興奮型

従来の常識で考えられないような症候や,症候の組み合わせを呈しうるのが自己免疫性脳炎であり,知識のアップデートが必要です.新しい時代の神経症候学ではこれら自己免疫性脳炎に特有な神経症候学と,機能性神経障害の陽性徴候を理解する必要があると思います.
★岐阜大学脳神経内科ではIgLON5抗体のCBAが可能ですので,診断不明のneuromuscular hyperexcitabilityの患者さんがいらっしゃいましたらご相談ください.
Bellucci M, et al. Patient With Rigidity and Fasciculations. Neurology. 2024 Feb 13;102(3):e208110.(doi.org/10.1212/WNL.0000000000208110

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