コラム

神経所見・検査所見

2023.12.29

あくび時に生じる麻痺側の腕の動きを,不随意運動や部分てんかん発作と間違えない!

最新号のNeurol Clin Pract誌の報告です.Parakinesia brachialis oscitans(PBO)という現象です.「Parakinesia」は本来の運動や行動とは異なる動きや不自然な動きのこと,「oscitans」はラテン語であくびをするの意味です.つまりPBOは,あくびを契機とした上肢の異常な運動のことです.

もともと脳梗塞で古くから報告されていましたが,今回,tumefactive MS(腫瘤性病変を伴う多発性硬化症)患者において初めて認められたことが紹介されています.発症から2週間後に,自発的に左腕を挙上することができないにもかかわらず,あくびをした際にのみ左腕が不随意に挙上する現象が繰り返し生じ,その後数週間で,運動機能の回復とともに,この現象は現象・消失しました.脳卒中における検討で,PBOは錐体路に病変がある患者(内包または橋に多い)に起こりうる一過性の症候です.不随意運動や部分てんかん発作と誤診し,そのための治療を開始ないことです.メカニズムは良く分かっていませんが,autonomic-voluntary dissociationの一例で,spinoarcheocerebellar pathway(脊髄原小脳路)は機能しているが,皮質橋小脳経路を介した皮質による小脳の抑制が失われることで説明できると書かれています.
Salavisa M, et al. Parakinesia Brachialis Oscitans in a Patient With a First Manifestation of Multiple Sclerosis. Neurol Clin Pract. 2023 Dec;13(6):e200204.(doi.org/10.1212/CPJ.0000000000200204
動画はYouTubeより.
https://www.youtube.com/watch?v=Who9WdxG_A8
Lim ICZY, et al. Parakinesia Brachialis Oscitans: Old Sign, New Findings. Stroke. 2022 Feb;53(2):e60-e62. (doi.org/10.1161/STROKEAHA.121.037124

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