コラム

神経所見・検査所見

2023.10.17

生焼けのシイタケに注意!

皮膚科の話題ですが,NEJM誌を眺めていて初めて知り驚いた写真です.72歳スイス人男性が,2日前から背中に発疹が出現し,救急外来を受診しました.かゆみは強く睡眠を妨げるほどでした.発疹が出現する2日前に,シイタケを含む料理を作って食べていました.背中全体と臀部上部に浮腫状のムチを打ったような線状の紅斑(edematous, flagellate plaques and linear patches)がみられました.リンパ節腫大,皮膚描記症(dermographism),粘膜病変はみられませんでした.シイタケ皮膚炎と診断されました.シイタケ皮膚炎は,1974年に初めて日本で報告された疾患で,生もしくは加熱不十分なシイタケを摂取した後,数時間から数日後に発症します.バーベキューなど,焼いたときに多く,煮たシイタケでは発症しないようです.特徴的な筋(すじ)のついた発疹(streaky rash),ないしムチを打ったような紅斑(flagellate erythema)を認めます.この皮膚所見はブレオマイシン曝露後や,まれに皮膚筋炎や成人発症スティル病でもみられるそうです.いずれにせよ,診断は食事歴が決め手となります.治療としてグルココルチコイド外用薬と抗ヒスタミン薬内服が行われ,2週間後には色素沈着が残存したものの,かゆみは軽減しました.今後はシイタケを十分に調理するよう助言されました.ただし再度食べても再発するとは限らず,単純なアレルギーとは違うようです.シイタケに含まれるレンチナン(lentinan)という多糖体が,炎症性サイトカインIL-1を誘導し,線状皮膚炎を引き起こすことは分かっています.
Janušonytė E, Pünchera J. Shiitake Dermatitis. N Engl J Med. 2023 Oct 12;389(15):1415. (doi.org/10.1056/NEJMicm2304409

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