動画はパーキンソン病に合併したPisa症候群です．「Pisaの斜塔」に由来し，斜塔のように上半身が斜めに傾斜してしまうことを意味します．体幹が不随意に「10°以上側屈する姿勢異常」と定義されます．Pleurothotonusとも呼ばれます（pleuro-は側腹の意の接頭語．-thotonusはおそらく姿勢や筋由来の症状を示す接尾語．例：opisthotonus後弓反張）．原因はパーキンソン病や薬剤（レボドパ，ドパミン作動薬，神経遮断薬，コリンエステラーゼ阻害薬，三環系抗うつ薬，SSRI，リチウム，ベンゾジアゼピン系薬剤）が知られてます．治療抵抗性です．

Pisa症候群は，1972年にスウェーデンの脳神経内科医Karl Axel Ekbomらにより初めて報告されました．Ekbomはrestless legs syndrome（別名：Willis–Ekbom disease）の研究で有名です．原著は（実物は入手できませんでしたが）神経遮断薬治療の副作用として体幹の強直性側屈とわずかな回旋を伴い，歩行により悪化した３症例の報告のようです．病因学的，治療学的考察を行い，心因性の可能性についても議論しているそうです．Michael Okun教授は，パーキンソン病では大脳皮質の変性，特に頭頂葉の変性が，この症候群を理解する上で重要になると述べています．
Nervenarzt. 1992 Jul;63(7):434-9.
J Neurol. 2009 Apr;256(4):683-4.
YouTube: 1.6. Parkinsonism with Pisa Syndrome - Parkinsonism and Related [Spring Video Atlas]
Michael Okun X (Twitter)@MichaelOkun