コラム

神経所見・検査所見

2023.04.04

片側顔面攣縮と眼瞼攣縮,機能性神経障害の鑑別2 ーPseudo-ptosisー

朝のカンファレンスで,Babinski 2 signの話の続きを行いました.写真の患者さんの所見は上記3疾患のいずれでしょうか?病歴は,転倒による頭部打撲後の翌週に左眼瞼下垂と羞明が出現しました(図左).

ポイントはBabinski 2 signでは患側の眉毛が上がっていましたが,今度は下がっていることです.そして図右は閉眼させて額にしわ寄せをしてもらったものです.

本例の所見はPseudo-ptosisもしくは機能性眼瞼下垂と呼ばれるものです.器質的な眼瞼下垂であれば,それを代償しようとして,患側の前頭筋は過収縮します.しかしこの患者さんはむしろ収縮が弱く,しわがありません.しかし図右のように方法を変えると前頭筋の収縮を確認することができます.よって機能性の眼瞼下垂と判断できます.

治療としては,羞明に対してサングラス,前頭筋のリハビリ,うつに対する薬物治療を行い,徐々に眼瞼下垂は改善しました.私も過去に同じ症候を呈して,多くの病院を受診していた患者さんを担当したことがあります.このような機能性神経障害の診察手技のマスターは,脳神経内科医にとって極めて重要です.
Practical Neurol. 2, 364–365 (2002).
https://www.research.ed.ac.uk/.../Stone_Pseudoptosis.pdf

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