コラム

神経所見・検査所見

2023.04.04

片側顔面攣縮と眼瞼攣縮,機能性神経障害の鑑別1 ーBabinski 2 signー

写真の3人は眼瞼攣縮(blepharospasm)と片側顔面攣縮(hemifacial spasm; HFS)のいずれでしょうか?一般に前者は局所ジストニアの一種,後者は異常動脈による顔面神経の根元の圧迫に起因すると考えられています.HFSの診断に有用な症候として「眼輪筋が収縮して閉眼すると同時に,前頭筋が収縮し眉が上がる.この一連の現象は自分の意志では再現できない」ことがあります.これはJoseph Babinski先生(1857-1932)の名前を冠したもうひとつの徴候で,Babinski 2 signもしくはother Babinski signと呼ばれています.つまり3人ともHFSになります.

臨床神経学においてもっとも有名な神経徴候と言えるBabinski signのオリジナルは1986年に書かれた学会の抄録で,わずか28行の報告でした(https://bit.ly/42ZTSwv).Babinski 2 signは1905年に発表されたHFS患者に見られる別の徴候です.眼瞼攣縮とHFSを比較した研究で,特異度100%と報告されています.メカニズムは,顔面神経の根元の圧迫によるHFSでは眼輪筋と前頭筋の運動ニューロンプールが異なる分節上神経パターンを持つことに起因していると考えられるのに対し,局所ジストニアである眼瞼攣縮ではこれらの筋の共収縮は,末梢の共活動を反映していると書かれています.またBabinski 2 signは自分の意志では再現できないので,機能性神経疾患(FND)との鑑別にも有用な所見と考えられます.
J Neurol Sci. 2017 Jul 15;378:36-37.(doi.org/10.1016/j.jns.2017.04.036
Mov Disord. 2013 Aug;28(9):1298-300.(doi.org/10.1002/mds.25472

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