神経所見・検査所見
2023.02.17
機能性ジストニアの診察 ―3つのポイント―
ジストニアとはおもに持続的筋収縮により生じる肢位の異常を指します.器質性と機能性(心因性)の両方の原因で生じます.カンファレンスで,機能性ジストニアを診るポイントを解説しました.
【まず病歴は重要】
軽い外傷や手術後の発症,発症前の心理的ストレス,突然の発症,思春期・成人期の発症,急激な進行と激しい症状の変動,寛解した時期があること,激しい痛みを伴うこと(頸部は除く)は参考になります.見られていないときに改善すること,偽薬や暗示等に顕著な反応があること,そして感覚トリックがないことも挙げられます.そのほか,自傷行為の既往,うつ病・不安障害などの精神疾患,過去の虐待,疾病利得の存在も確認します.
【診察:固定ジストニアか?】
器質性ジストニアはその程度や肢位がある程度,変動します.この変動がなく,ずっと同じ肢位のままであるのが固定ジストニア(fixed dystonia)です.この場合,機能性ジストニアの可能性が高くなります.ただし機能性ジストニア以外にも,固定ジストニアは大脳皮質基底核症候群,Stiff-limb syndrome,外傷後の複合性局所疼痛症候群(CRPS)等でも認められるため,これらの除外は必要です.しかし多くの場合は容易に除外できます.
【診察:典型的パターンか?】
機能性ジストニアでは典型的パターンが存在しますので確認します(図).Aは手指のジストニアですが,物をつまむためのⅠ,Ⅱ指の機能(pinch)は保たれる傾向があります.Bは痙性斜頸ですが,注目すべきは肩で,頸部ジストニアと同側の肩は挙上し,対側の肩は低下します.Cは足部の機能性ジストニアの典型パターンです.Dは顔面ジストニアですが,口唇と顎が偏位し,同側の広頸筋の緊張を認めます.
【診察:distractionとattentionでどうなるか?】
診察できわめて重要なポイントは注意を逸らす(distraction)と改善し,注意を向ける(attention)と悪化することを証明することです.そのためのコツですが,例えば上肢にジストニアを認める場合,問診も診察も上肢については最後にし,なるべくその他の部位から行い,上肢への注意を逸します.その間の上肢のジストニアの状況をよく観察します.最後に上肢の問診や診察に移り,注目が行くことで,ジストニアが徐々に悪化することを確認します.
【診察:その他の徴候】
最後にジストニア以外の機能性運動障害・麻痺・感覚障害等の存在も参考になります.
Schmerler DA, Espay AJ. Handbook of Clinical Neurology. 139, 235-245, 2016