コラム

神経所見・検査所見

2022.09.02

謎多きMann試験(2)―なぜMann試験は日本でのみ広く使われるようになったか?―

Mann試験の日本におけるルーツを探しました.私が神経内科の領域で見つけた最も古い記載は「椿忠雄・佐野圭司・五島雄一郎(編).臨床神経学(医学書院1966)」という教科書にありました(図左).祖父江逸郎先生(名古屋大学講師・当時)が執筆されています.それ以前の資料では,沖中重雄先生による神経診察動画「復刻版 神経疾患の検査と診断(https://bit.ly/3cDUSAT)」にはMann試験は含まれてはいませんでした(1959).ところが神経内科以外も含めると,耳鼻科領域の論文「Galvanic testの研究(1960)」においてMann試験が行われていました(図右).弱い電気刺激(galvanic stimulation)を用いて行う前庭刺激検査の論文で,前回ご紹介したLudwig Mann先生の原著(1904, 1912)を模倣して,両側耳後部を電気刺激した影響をMann試験で評価するものでした.1987年の平衡機能検査法基準化委員会答申書にもMann試験が詳細に記載されていました(https://bit.ly/3Tv7WJB).推測の域は出ませんが,この試験は日本の耳鼻科領域で盛んに議論され,そこから神経内科に広まって,両足を縦に揃えて閉眼するのがMann試験,そして閉眼しない状態をMannの肢位と呼ぶようになったの対し,海外では神経内科に広まることはなかったということではないかと思われます.いかがなものでしょう?ご意見や情報等,宜しくお願い致します.
資料を一緒に探してくださいました平山幹生先生に感謝申し上げます.

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