コラム

神経所見・検査所見

2022.03.07

ポパイ徴候(Popeye sign)を診た場合,疑う神経疾患は?

まるでポパイの腕のような力こぶに見えます.このポパイ徴候と呼ばれる所見は上腕二頭筋長頭腱の断裂後,腕を屈曲したときに認めます.上腕二頭筋の腱の断裂は高齢者が物を持ち上げた時に起こることが多いです.上腕二頭筋の筋腹が肘の方に下がってしまうため,屈曲すると筋腹が膨隆して見えます.写真の症例は断裂後2日目には出現しています.しばしば腱に皮下出血を伴います.
では神経疾患ではどのような場合に認められるでしょうか?大会長を仰せつかった一昨日の第162回日本神経学会東海北陸地方会にて,熊本大学増田曜章先生から遺伝性トランスサイレチン (ATTRv) アミロイドーシスのご講演をいただきましたが,そのなかで「この徴候を診た場合,アミロイドーシスを疑う」というお話がありました.つまり腱・靱帯アミロイドーシスにより,上腕二頭筋長頭腱の断裂が生じうるということです.多くの症例では断裂に気づかず,いつのまにかポパイ徴候を呈しているそうです.
N Engl J Med. 2017 Nov 16;377(20):1976.(doi.org/10.1056/NEJMicm1704705
Lancet. 2019 Feb 23;393(10173):e32.(doi.org/10.1016/S0140-6736(19)30236-3

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