コラム

神経所見・検査所見

2022.02.03

関節リウマチ患者にみられた腹壁反射解離

動画はNeurology誌のtwitterで公開されているもので,病変の局在をクイズ形式で尋ねています.症例は関節リウマチの既往のある59歳女性で,6ヵ月以上前から進行する歩行障害とLhermitte徴候を呈しました.四肢腱反射亢進と腹筋反射の亢進を認めましたが,腹皮反射は消失しています(腹壁反射解離;reflex dissociation).質問は「病変はC5/T3/T6/T8より上位のいずれか?」で,案外正答率は低く37%でした.自分も回診でお腹の診察はしにくくて省略してしまい,若い先生がたに見せていないので反省しました.以下,2つの反射の特徴をまとめます.
①腹皮反射=表在腹壁反射=表在多シナプス反射
 反射弓(T6―L1肋間神経―脊髄―視床―大脳)
②腹筋反射=深部腹壁反射=腹筋の伸展反射(腱反射)
 反射弓(下部肋間神経―脊髄T6-12) 

症例では,頸部MRIで環軸椎亜脱臼による脊髄圧迫と,軸椎後方の滑膜増生を認めました.腹皮反射は健常者の20%に見られませんし,腹筋反射も肥満や高齢者,経産婦などで出にくく,さらに繰り返すと出にくくなるので,それぞれ単独では解釈が難しいですが,腹壁反射解離を認めるときはかなり確実にT6より上位の錐体路徴候を疑います.
Brum IV, et al. Neurology. 2021 Oct 21:10.1212/WNL.0000000000013007.
doi.org/10.1212/WNL.0000000000013007

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