コラム

神経所見・検査所見

2021.11.03

IL-8は脳内持続炎症のマーカーとなる可能性がある ―失語症を呈したCOVID-19脳症―

当科から症例報告をご紹介します.Open accessですので自由にダウンロードできます(https://bit.ly/3CL0mSk).
Kudo, T. et al. Persistent intrathecal interleukin-8 production in a patient with SARS-CoV-2-related encephalopathy presenting aphasia: a case report. BMC Neurol 21, 426 (2021).

【要約】
81歳の男性が,COVID-19感染の数日後に,意識障害とてんかん重積状態となり当科に転院した.ステロイドと免疫グロブリン静注により改善したものの,失語・失書が明らかになった.血清および脳脊髄液中のインターロイキン(IL)-6,IL-8,MCP-1の濃度が上昇していたが,IL-2とIL-10は上昇していなかった.強力な免疫療法にも関わらず脳脊髄液中のIL-8は治療前の4倍に増加していた.

ポイントは以下の3点です.
1)血清と脳脊髄液のサイトカインの比較から脳症を合併したと考えられた.
2)COVID-19脳症では,失語・失書といった局所神経症状をきたしうる.
3)CIVID-19関連脳症では,全身の炎症に続いてIL-8を介した中枢神経系の炎症(ミクログリア活性化)が起こり,免疫療法後も持続・悪化しうる.つまり脳内持続炎症のマーカーとしてIL-8のモニタリングは,免疫療法の継続や持続を判断する際に有効である可能性がある.

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