コラム

神経所見・検査所見

2021.10.21

ベリーダンサー症候群の新たな原因

ベリーダンサー症候群は,横隔膜が不随意に繰り返し収縮し,腹部を起伏させたり収縮させたりする,あたかも中東のベリーダンスを踊っているような運動異常症です.腹部ジスキネジア,横隔膜フラッターとも呼ばれます.不快感や痛み,髄節性脊髄性ミオクローヌスを伴うことがあります.責任病変として脊髄や大脳基底核が指摘されています.原因として手術などの外傷(ただし異論あり),薬剤(サルブタモール,レボドパ,ガランタミン等),進行性核上性麻痺,機能性疾患が報告されています.有名なのはサルブタモールで,高濃度になるとβ2受容体選択性が失われて不随意運動を誘発しうるので,喘息患者では確認が必要です(BMJ Case Rep. 2021;14:e241244).個人的にはベリーダンサー症候群の原因を,機能性(心因性)と診断したことが数回ありました.内服歴や画像所見に異常がなく,睡眠中に消失し(脊髄病変による場合は持続します),さらに疾病利得や身体化障害,精神症状の存在,distractionと偽の筋力低下・感覚障害を認める場合には機能性運動異常症の可能性が高くなります.ただ最近,自己免疫性のCaspr2抗体陽性例が報告され (動画),機能性の診断はより慎重に行う必要が出てきました.Caspr2抗体はカリウムチャネルを遮断し,neuromyotonia,Morvan 症候群,辺縁系脳炎,てんかん発作,小脳性運動失調を呈します.下肢のミオクローヌスの報告もあります.ベリーダンサー症候群に他の自己免疫疾患を合併する場合や腫瘍(主に胸腺腫)を認める場合,Caspr2抗体を測定したほうが良さそうです.

Mov Disord Clin Pract. September 23, 2021(doi.org/10.1002/mdc3.13351

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