コラム

神経所見・検査所見

2021.10.09

鯉の口

回診で研修医の先生が緊張型ジストロフィー(DM1)の患者さんの診察所見を説明し,「carp mouth」という言葉を用いました.恥ずかしながら不勉強で分からず「それはどういった所見ですか?」と質問をしたところ,DM1で見られる口の形態異常(上唇の張り出し)であることを教えていただきました.勉強しているなと感心しましたが,一方,どうして自分は知らなかったのだろうと思いました.調べてみると,carp mouthないしcarp-like mouthは「先天性」緊張型ジストロフィーで認める「中顔面の低形成とV字を逆にしたような鯉のような口」と記載されていました.弱々しい泣き声やうまく吸うことができない原因となる小奇形のようです.小児期以降に発症した症例では通常認めないとあります.コーネリア・デ・ラング症候群やシルバー・ラッセル症候群等での報告もありました.ただ日本小児遺伝学会の記載を読むと,軽蔑語にあたるため「過去に使われたものの言い換えが望ましい」とありました(https://bit.ly/3iISrwI).現在は「U字型の唇紅・上口唇(Vermilion, Upper Lip, U-Shaped)」と呼ぶようです.所見の記載にもきちんとした配慮が必要であることが分かり,勉強になりました.
Continuum (Minneap Minn). 2016 Dec;22:1889-1915.(doi.org/10.1212/CON.0000000000000414
Front Neurol. 2018 May 2;9:303.(doi.org/10.3389/fneur.2018.00303

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