コラム

神経所見・検査所見

2021.01.14

脳梗塞に合併する頭痛の特徴

脳神経内科医になりたての頃,急性発症の激しい頭痛で救急外来を受診した患者さんを担当し,クモ膜下出血を疑い,頭部CTを撮像したものの異常はなく,小脳梗塞であることが判明した経験があります.その時に脳梗塞も頭痛発症することを学びました.今回,脳梗塞時にみられた頭痛の特徴を,対照群と比較し,前方視的に検討した初めての研究がロシアから報告されたので,興味深く読みました.clinical questionは2つあり,(i) 脳卒中発症時の頭痛の典型的な臨床的特徴は何か?(ii) この頭痛と脳卒中のどのような病態が関連しているのか?でした.

対象は,初発の脳梗塞患者550名(平均63.1歳,男性54%)と,対照群として,救急外来に受診し,急性の神経障害や重篤な障害を伴わなかった者(腰痛,膵炎など)192名(平均58.7歳,男性36%)です.

さて結果ですが,頭痛は脳梗塞患者の82/550名(14.9%),対照群の9/192(4.6%)に認められました(図).脳梗塞の頭痛で最も多いのは,初めて経験するタイプの頭痛で(全体の8.4%;頭痛の56%),主に片頭痛様でした.次に多いのはこれまでとは特徴が変化した頭痛で(全体の5.5%;頭痛の36%),
主に緊張型頭痛様でした.残りはいつもと変化のない通常の頭痛になります.

次に頭痛に関連する因子としては,心原性脳塞栓症(p=0.002,オッズ比[OR]=2.4),後方循環系の脳梗塞(p=0.01,OR=2.0),15 mm以上の梗塞(p=0.03),小脳梗塞(p = 0.02,OR = 2.3),良好な神経学的状態(p = 0.01,OR = 2.5),および大血管の動脈硬化の低頻度(p = 0.004,OR = 0.4)が同定されました.

以上より,脳梗塞の15%で頭痛を認め,その特徴はこれまでに経験のない片頭痛様の頭痛や,いつもとは異なる緊張型頭痛が認められることが多いことが分かりました.また頭痛を合併する脳梗塞を見た場合,心原性脳塞栓症,後方循環系,小脳梗塞を疑う必要があります.
Headache at onset of first‐ever ischemic stroke: Clinical characteristics and predictors. Eur J Neurol. Dec 16, 2020(doi.org/10.1111/ene.14684

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