コラム

神経所見・検査所見

2020.12.17

振戦のベッドサイドレクチャー

カンファレンスで「企図振戦」が話題になりましたので,回診の際,上肢の姿勢時振戦を認める患者さんを診察してレクチャーをしました.診察ではまず,出現の状況(安静/静止時,姿勢時,動作時),分布(上肢,下肢,顔面など),周波数,振幅を確認します.とくに姿勢時振戦ではなるべく長い時間,上肢を前方に伸ばして,重力に抗する姿勢をとってもらったり,顎の下で両Ⅱ指の先端を離して保持した姿勢をしてもらったり,もしくは実際に物を持ってもらったりします.周波数はlow (<4 Hz),medium (4-7 Hz),high (>7Hz)と分類されますが,慣れるとおよそ何Hzか分かるようになります.だいたい4 Hzかなと言って,スマホ・アプリ「Study My Tremor」を用いて正確な周波数と振幅の測定を行ったのが,図になります.姿勢時振戦であれば,手掌にスマホを乗せて1分ぐらい保持していただくと結果が出ます.このようなデモを行うと,皆,興味が湧いてくるようです(笑).
さて問題の「企図振戦」です.企図振戦と動作時振戦はほぼイコールですが,企図振戦のなかに姿勢時振戦が含まれてしまうことがあります.つまり指鼻指試験などで標的に近づくにつれ顕著になる振戦です.これは動作時というより,姿勢性のものと考えられます.企図振戦は有名な用語ですが,むしろ動作時であれば動作時振戦(kinetic tremor),目標に近づくに連れ増強するなら終末時振戦(terminal tremor)と記載したほうが正確です.これらはおすすめの教科書「ふるえ(柴﨑浩ら:医学書院)(https://amzn.to/34hqG7m)」で学びました.繰り返し読み,付録のDVDを何度も見ていると,不随意運動がとてもよく理解できるようになり,おすすめです.

アプリ study my tremor(有料:$3.99)
http://studymyhealth.com/funktionen/studymytremor/

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