コラム

神経所見・検査所見

2020.11.15

起立性低血圧に合併するcoat-hanger pain/ache

回診でcoat-hanger painについて説明しました.これは図のような後頸部から両肩にかけて,起立時に出現する痛みで,コートのハンガーのような分布になるため,この名称で報告されました(Spinal Cord. 2002;40:77-82. doi.org/10.1038/sj.sc.3101259).この論文では脊髄損傷における合併を検討していますが,pure autonomic failure(PAF)や多系統萎縮症など自律神経障害を呈する疾患では合併することがあります.立位をとったときに一過性に生じる,締め付けられるような,ズキズキする中等度の痛みを生じます.横になると改善します.起立性の失神の前駆症状(prodrome)としても重要です.後頸部筋の虚血により生じると報告されています.国際頭痛分類第3版(ICHD3)の2次性頭痛のなかには含まれておらず,追加するよう求める研究者がいます(Curr Pain Headache Rep. 2018;22:54. doi.org/10.1007/s11916-018-0706-4).臨床医は,①起立に伴い出現する一過性の頭痛・頸部痛が存在すること,ならびに②起立性低血圧に対する生活指導や治療で改善しるうることを知っておく必要があります.

このような脳神経内科に関する症候や画像所見などを,当科のホームページのコラムでまとめて紹介しております.こちらもご参照いただければと思います.
http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/column/

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