コラム

神経所見・検査所見

2020.07.17

びっくり眼

回診で「びっくり眼」の話をしました.Machado-Joseph病/脊髄小脳変性症3型(MJD/SCA3)の代名詞的な目の徴候です.驚いたときのように上眼瞼がつり上がって,眼窩の中に引き込まれるように縮こまり(矢印),黒目のまわりに白目がむき出しになるような徴候を「びっくり眼」と呼びます.平山先生の神経症候学(初版)では,MJD/SCA3で有名になるずいぶん昔から,脳炎後遺症などで気が付かれていたとして,先人に敬意を評しDalrymple-Stellwag徴候と記されています.知っておくべきことが2点あります.ひとつは一見,眼球突出(bulging eye)のように見えますが,測定すると眼球突出ではないということです.このためeyelid retractionや上眼瞼後退(退縮)と記載されます.もう一点はMJD/SCA3に特異的なものではなく,他の脊髄小脳変性症やパーキンソン症候群でも認められるということです.下記の写真は順番に,SCA1,SCA2,MJD/SCA3の患者さんで,この論文では中脳病変を合併すると出現すると記載されています(中脳病変で両側性に起こるものはCollier徴候,上眼瞼の筋緊張亢進で生じるものはDalrymple-Stellwag徴候と区別して使用されます:神経症候学改訂第2版).
Pedroso JL, et al. Eyelid retraction is not a pathognomonic sign of Machado-Joseph disease in the context of spinocerebellar ataxias. Arq Neuropsiquiatr. 2014;72(4):326-327.

一覧へ戻る