コラム

神経所見・検査所見

2020.06.12

生理的あくびと病的あくび

昨日は久しぶりに病棟に戻ってきた学生も参加しての病棟回診でした.教えることは難しいですが,やはり楽しいなぁと思いました.ただカンファレンスでは何度かあくびが出そうになり困りました.急に蒸し暑くなり,近所のカエルの大合唱もあって寝苦しく,睡眠不足のためでした.
生理的なあくびは,脳を覚醒しようとする反応で,脳を冷却しているのだという説があります(doi.org/10.1016/j.physbeh.2019.04.016).あくびの中枢は視床下部室傍核や脳幹などと言われていて,ラットの室傍核に覚醒ホルモン・オレキシンを注入して刺激すると,覚醒反応が誘発されます(doi.org/10.1016/s0166-4328(01)00307-2).
一方,脳病変に伴って,病的なあくびが出現することも知られています.多発性硬化症や視神経脊髄炎スペクトラム障害での報告がありますが,最新号のNeurology誌には,ウイルス感染後の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発症した15歳少年の病的あくびの動画が掲載されています(図:リンク先からDLフリーです).病変は橋背側と両側の島回に認められています.ステロイドパルス療法にて改善しました.頻回のあくびは,神経症候のひとつでもあるわけです(doi.org/10.1212/WNL.0000000000009595).

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