コラム

神経所見・検査所見

2019.10.10

甲状腺機能低下症の腱反射所見がいろいろな人名で呼ばれる理由

回診で甲状腺機能低下症の腱反射所見について話をしました.動画のようにアキレス腱をハンマーで叩いたあと,腓腹筋が収縮してから再び弛緩して元に戻るまでの時間が正常よりも長くかかる所見です(弛緩相の遅延と言います).本症に特異的な所見で,診断的価値があります.平山恵造先生はLambert EHら(LEMSのLambert先生です)が,1951年にこの現象を報告したためLambert徴候と呼ばれているものの,1924年にChaney CWが同様の報告をしているので,Chaney-Lambert徴候と呼ぶべきと述べています(Brain Nerve 1975).一方,Woltman徴候が1956年に出版された教科書に初めて記載されました.実はChaneyの指導医であったWoltmanは,Chaneyに,以前から気づいていたこの徴候を論文にまとめるように指導したものの,Chaneyは単著の論文として報告し,Woltmanについてまったく触れませんでした.この事情を知る教科書の著者らはWoltmanに敬意を評し,この徴候にWoltmanの名前を残したのだそうです.よって近年はWoltman徴候と呼ぶ文献が多いです.

Neurology, 2013; 80 (7 Supple)(P05.256):N Eng J Med 2018; 379, e23(フリー動画)

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