コラム

神経所見・検査所見

2019.04.17

胸髄領域の高位診断に役に立つ腹壁反射

腱反射の講義をしていて,最近,腹壁反射(腹皮反射)を学生にも若手レジデントにも見せていないなと思いました.思い当たる理由はいくつかあって,OSCE(客観的臨床能力試験)や日本神経学会「神経学的検査チャート作成の手引き」で必須とされなくなったこと,画像診断が発達したこと,お腹を見せねばならない検査であること,両側性に陰性の場合,必ずしも病的と言えないこと(加齢,腹壁の緩んだ経産婦,皮下脂肪の熱い肥満,腹部や膀胱緊満など)が考えられます.ただこの反射は胸髄領域の高位診断には役に立ち,胸髄レベルのMRIをオーダーするか迷う際には確認しています.とくに左右左のある胸髄病変を呈する疾患には役に立ちます.ビデオは右腹壁反射が消失していますが,右優位のT7-10の長大病変を呈した視神経脊髄炎でした.本反射は多シナプス性で,「肋間神経→後根→脊髄視床路→脳内反射弓→錐体路→前根→末梢神経→腹筋」のどこに病変があっても消失します.反射レベルは諸説ありますが,私はおおまかに上腹部T6-9,中腹部T9-11,下腹部T11-L1と覚えています. N Engl J Med 2014; 370:e29(フリー動画)

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