コラム

神経所見・検査所見

2018.04.21

強制泣き笑いと情動失禁のちがい

回診で「強制泣き笑い」の機序について議論しました.外的刺激によって顔面筋が攣縮して生じるという話をしました.つまりそのパターンにより,泣き顔になるか笑い顔になるか決まります.「強制笑い」では目が開き,口角が上がるのに対し,「強制泣き」では目が細くなり,口角が下がります(図).ともに眉毛が上がり鼻唇溝は深くなります.鑑別すべき徴候として「情動失禁」があります.顔面筋の問題ではなく,実際に喜怒哀楽を制御できなくなった状態です.「強制泣き笑い」は大脳基底核や視床,錐体路の病変が関与し,「情動失禁」は大脳皮質病変で,抑制がとれて生じます.ALSでは錐体路の変性が進むと「強制泣き笑い」が出現し,さらに病期が進むと「情動失禁」が加わると言われています.

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