コラム

神経所見・検査所見

2018.02.11

一側性下垂足(drop foot)の鑑別

標題の件について,外来で学生さんと議論しました.下垂足は足の背屈力低下により,歩行時に足尖が下垂します.前脛骨筋のMMTは3未満です.原因としては,腓骨神経障害と腰椎変性疾患が多く,上円錐症候群や脳病変でも生じます.

腓骨神経障害は下肢で最も多い圧迫性ニューロパチーで,腓骨神経は坐骨神経から分岐し,膝外側にある腓骨頭の後ろを巻きつくように走行するため(図左),長時間,足を組んだ際などで圧迫され麻痺が生じます.

腰椎変性疾患では,L4/5の腰椎椎間板ヘルニアによるL5神経根症が多いものの,L4神経根も関与し,複数の神経根が障害されると下垂足を呈する確率が高くなります.両者の鑑別には(1)腰椎変性疾患では腰下肢痛の合併が多いのに対し,腓骨神経障害では認めないこと,(2)腓骨神経障害では腓骨神経支配筋以外の麻痺を認めないことが参考になります.例えば後脛骨筋は,L5神経根由来だが腓骨神経支配ではないため(脛骨神経支配),L5神経根症では筋力が低下しますが,腓骨神経障害なら正常です.後脛骨筋の筋力は,足を底屈させ,さらに内反させて,左右差を確認します(図右). その他,胸腰椎移行部病変による上円錐症候群(L4-S2髄節レベル)でも生じます.脳血管障害では片麻痺を呈し,腱反射亢進や病的反射陽性を伴います.

図はhttp://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03060_03より

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