コラム

医療と医学

2021.11.10

「ヒポクラテスの木」 成長中!

ポリクリ(病棟実習)で学生と一緒に「ヒポクラテスの誓い」を読んでいます.自分が学生のとき,医学部長でいらした武藤輝一先生がしてくださったことです.武藤先生は講義の最後に「病院前のヒポクラテスの木を見に行くように」とおっしゃられました.「ヒポクラテスの木」とは,ギリシャのコス島にある,ヒポクラテスがその木陰で弟子たちに医学を教えたというプラタナスの大樹のDNAを引き継いだ木のことです.日本にはいくつかの系統がありますが,有名なものが蒲原株です.これは著名な整形外科医,医史学者で俳人でもある蒲原宏博士が,1969年にギリシャのコス島で木の実を採取し,日本に持ち帰り,みずから播種育成されたものが起源です.残念ながら岐阜大学にはなく学生に見せてあげられないので,日本の脳神経外科の礎を築いた中田瑞穂先生の画「ヒポクラテス像」(左図)(https://bit.ly/3CPRZ82)を購入し,廊下に掲げて見てもらっていました.ただやはりヒポクラテスの木を学生に見せてあげたいと思い,蒲原先生にご連絡をしたところ,ご快諾をいただき移植の準備が始まりました.学生のときに眺めたあの木から挿し木,分苗移植したものが順調に育ち,来年の秋には移植ができるまでになりました(右図).中田瑞穂先生は病床で最後に「ヒポクラテスの木」という文章をお書きになりました.「1メートルに達したばかりの若木の天を摩するに至る成長を見ることはこの私には無理というものである.しかし私は,これを私達で育てますと,この移植に積極的であった学生有志のあったことは,この木の成長が約束されていると同様,医学部に最も重要な正しい医学の正統,ヒポクラテスから伝わった医の正道を伝えつづけようとする純粋なこころを目の当たりに示したものであって,木の成長を確認するよりもはるかに私に心強いものを感じさせる」と書かれています.この木を岐大の学生のみんなと一緒に植える日を心待ちにしています. 

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