コラム

医療と医学

2020.09.23

12の危険因子を意識した認知症予防@世界アルツハイマー月間

若年死亡率の低下に伴い,認知症を含む高齢者の数は増加しています.しかし,教育,栄養,ヘルスケア,ライフスタイルの変化などの改善により,多くの国で認知症の年齢別発症率は低下しています.そして9月は「世界アルツハイマー月間」,世界各地でいろいろな取組みが行われています.Lancet誌でも認知症の予防・介入・ケアに関する提言を行っています.2017年には認知症の9つの危険因子として「教育不足,高血圧,聴覚障害,喫煙,肥満,うつ病,運動不足,糖尿病,社会的接触の少なさ」をエビデンスとともに紹介していましたが,今回,危険因子をさらに3つ追加しました.それは「過度のアルコール消費,外傷性脳損傷,大気汚染」です.論文ではメタ解析とともに,認知症予防の12の危険因子に対する人生のステージごとの取り組みモデル(図)を提示しています.これらの危険因子の予防に取り組むと,世界の認知症の約40%は修正可能とのことです.具体的には,以下の取り組みにより認知症を予防または遅らせることが可能と述べています.頑張らねばなりませんね.

1)40歳前後から中年期に収縮期血圧130mmHg以下の維持を目指す(高血圧症の降圧治療は認知症の予防に有効な唯一の薬).
2)難聴に対しては補聴器の使用を奨励し,過度の騒音曝露から耳を保護し難聴を軽減する.
3)大気汚染や副流煙を減らす.
4)頭部の怪我を防ぐ.
5)週21単位以上の飲酒は避ける.
6)途中からでも認知症のリスクを減らすことができるので禁煙する.
7)すべての子どもたちに初等・中等教育を提供する.
8)肥満と糖尿病を防止・治療する.
9)中年期以降の身体活動を維持する.
Lancet. 2020 Aug 8;396(10248):413-446(doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30367-6.)

一覧へ戻る