コラム

医療と医学

2019.09.11

「Medical hypothesis」のすすめ ―多系統萎縮症ミオクローヌスは脊髄起源?―

多系統萎縮症ではときに手指のjerky,irregular,かつ振幅の小さい不随意運動が,姿勢時もしくは運動開始時に見られます.振戦とは区別されminipolymyoclonusと呼ばれています.その起源は電気生理学的に大脳皮質ないし脳幹という説がありましたが未確定でした.最新号のNeurology誌の「Medical hypothesis欄」に脊髄起源という説がMGHより報告されており驚きました.22例の剖検例で,脊髄の詳細な検索が可能であった6例を,myoclonusの有無で3例ずつ2群に分け,図のように脊髄を8分割したROIを設定しています.αシヌクレイン染色を行いdensitometryで評価すると,前角と側索で明らかに染色性が高いという結果でした(P<0.001及び=0.02).面白いアプローチですが,大脳皮質や脳幹の検索をしていないことやNが全く少ないという大きな問題点があります.しかし仮説としては魅力的で,今後,臨床・病理研究者により検証されるものと思います.その意味でNが少なくエビデンスを確立できないでいる魅力的なアイデアを「Medical hypothesis欄に投稿する」のは良い方法だと思いました. Neurology. 2019 Aug 13;93(7):302-309.

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