コラム

医療と医学

2019.02.21

ペラグラを栄養障害と見抜いた医学者の話

カンファレンスでPellagra(ビタミンBのひとつ,ナイアシンの欠乏症)の話をしました.イタリア語で「皮膚の痛み」を意味します.アルコール多飲,胃切除術後,拒食症,化学療法などを背景に発症します.今年,インドにおける31名の症例集積研究が報告されましたが,有名な3徴には頻度の差があり,全例で皮膚症状(光線過敏,赤い発赤,色素沈着)を認めるものの,せん妄は58%,下痢は19%でした.神経合併症は多く,末梢神経障害を32%,ウェルニッケ脳症26%,けいれん発作16%で認めました.皮膚症状は適切なビタミン補充で3週間以内に驚くほどきれいに改善するそうです(図左).原因が分からなかった20世紀初め,とうもろこしを主食とした米国では毎年10万人が死亡していたそうです.医学者のJoseph Goldberger(1874-1929;図右)は栄養障害説をたて,感染症説を否定するために,患者の血液,排泄物を自ら摂取し,感染しないことを示しました.栄養障害疾患の発見の歴史で思い出すのは,脚気(ビタミンB1欠乏)にまつわる海軍高木兼寛と陸軍森鴎外の対決ですが,いずれの逸話も非常にドラマチックです.
Alcohol Alcohol. 2019 Feb 5. doi: 10.1093/alcalc/agz004.
Trans Am Clin Climatol Assoc. 2015;126:20-45.

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