コラム

医学と医療

2018.01.30

事前指示書(アドバンス・ディレクティブ)で気をつけていること

事前指示書とは「将来,判断能力を失った際,自分に行われる医療行為に対する意向を,前もって意思表示するもの」です.これには,自分が意思決定できなくなった時の代理人を指名する「代理人指示」と,治療に関する具体的な希望を記録する「内容的指示」が含まれます.私は患者さんに,内容的指示は,①状況によって容易に変容するため,何度でも変更できること,②具体的な状況について考える必要があることをお伝えしています.後者は,延命を希望されない患者さんでも,症状を回復できる状況である場合どうするかなどの議論が必要です.また患者・家族関係では,日本は欧米と比べ,患者さんの希望より生命尊重が優先されやすいため,両者に齟齬が生じることもあります.つまり事前指示書が却って倫理的問題を招くことがありますが,これを避けるため,適切な事前指示書作成を指導する必要があります.臨床倫理学を教えてくださった箕岡真子先生は「私の四つのお願い」という事前指示書を出版されていますが,指示に従い記入していくと,代理人指示,内容的指示,QOLに関わる指示,家族に知ってもらいたいことが洩れなく記載できるようになっていてお薦めです.

「私の四つのお願い」の解説

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