コラム

脳血管障害

2018.05.28

一過性全健忘における海馬の異常信号は遅れて出現する

朝のカンファレンスで一過性全健忘(TGA;transient global amnesia)症例の画像を議論しました.急性発症の前向性健忘と逆行性健忘を主徴とし,24時間以内に消失します.発作中は同じ質問を繰り返します.発症後24~72時間の拡散強調画像にて,海馬CA1領域に点状の異常信号が出現します.左右いずれにも出現しますが症状に差はありません.動脈性虚血説や静脈うっ滞説が指摘されましたが,近年は皮質拡延性抑制(CSD)説が有力です.つまり「精神的ストレス・疼痛➔グルタミン酸などの放出➔細胞の脱抑制・脳血流増加➔再分極・緩徐な血流低下➔血流低下に脆弱な海馬CA1領域の障害・細胞性浮腫➔MRIで検出」という機序です(画像はJ Clin Neurol. 2008 ;4(2):59-66より引用)

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