VOICE~岐大医学部から~
退職教授からのメッセージ
生命原理学講座
解剖学分野
千田 隆夫 先生
『VOICE-岐大医学部から-』第139回は、令和7年3月をもって退職となった、医学部医学科 生命原理学講座 解剖学分野 千田 隆夫 先生にお話を伺いました。
教員生活を振り返って
昭和59年に和歌山県立医科大学を卒業してすぐに、大阪大学医学部第三解剖学教室(藤田尚男教授)に大学院生として入り、解剖学の教育と研究の道に進みました(その後、助手⇒講師)。その後、名古屋大学医学部第一解剖学教室の助教授を経て、平成12年に藤田保健衛生大学医学部第一解剖学教室の教授となり、平成23年から岐阜大学大学院解剖学分野に移りました。研究テーマは最初は細胞骨格とタンパク分泌機構、その後、APC(adenomatous polyposis coli)の発現・機能解析をライフワークとしました。
いずれの大学でも最も多くの授業時間を担当し、簡潔明瞭な講義と、和やかさの中にも緊張感のある実習を心掛けました。岐阜大学医学部では、国際交流委員として、岐阜大学医学部と韓国・忠北大学医学部の相互学生交流を進めました。趣味のローイング(ボート)の経験を活かして、岐阜大学ボート部の再興と発展に力を注ぎ、ローイングを通じた学生育成と地域貢献にも多少はお役に立てたかもしれません。献体されたご遺体を用いた外科手術手技研修(カダヴァーサージカルトレーニング)を開始し、間接的ではありますが、地域医療にも貢献できたことをうれしく思います。楽しく充実した岐阜大学での14年間の教員生活でした。
次世代へのメッセージ
私は臨床医になるつもりで医学部に入りましたが、学生時代に出会った先生の影響で解剖学の道に進むことになりました。学生時代に出会ったローイングを生涯の趣味としたことで、国内・海外に多数の友人を得ました。人生とは予想外の出来事の連続です。毎日出会う人、毎日遭遇する事象を一期一会ととらえ、それらをポジティブに活かすように心がけることで、人生は何倍も何十倍も楽しく、豊かになります。
地球規模の温暖化の進行、大国間のパワーバランス崩壊のおそれ、日本では少子高齢化の加速と暗澹たるムードが漂う昨今ですが、そのような世情であるからこそ、次世代を生きる若い世代には"ポジティブ思考"を心掛けて欲しいと思います。チャンスは日常の生活の中にあります、毎日出会う人の中にあなたの人生を大きく変える人が潜んでいます。そのような期待を持って毎日を過ごしてください。
現代は"多様性"の時代です。画一的な発想や生き方よりも、その人にしかできないオンリーワンが尊重されるようになってきました。諸君が目指す医療職や研究職も、必ずしも以前からあるお決まりのコースを歩む必要はないのです。学生時代はそのような多様性を模索する時代です。いろいろな人に出会い、いろいろな経験をすることで、視野を拡げ、自分の可能性を探り、選択の幅を広げておきましょう。その中から、将来の自分の人生を切り開くきっかけが見つかるかもしれません。
次世代の皆様のご発展を祈念いたします。
略歴
1984年3月 | 和歌山県立医科大学卒業 |
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1984年4月 | 大阪大学大学院医学研究科入学(解剖学専攻) |
1986年6月 | 大阪大学医学部助手(解剖学第三講座) |
1991年2月 | 大阪大学医学部講師(解剖学第三講座) |
1994年5月 | 名古屋大学医学部助教授(解剖学第一講座) |
2000年7月 | 藤田保健衛生大学医学部教授(解剖学第一講座) |
2011年8月 | 岐阜大学大学院医学系研究科教授(解剖学分野) |