概要

VOICE~岐大医学部から~

脳神経外科学分野からのメッセージ

医学系研究科 脳神経科学講座
脳神経外科学分野
教授 出雲 剛 先生

『VOICE-岐大医学部から-』第135回は、令和6年1月に就任されました、医学系研究科 脳神経科学講座 脳神経外科学分野 教授 出雲 剛 先生にお話を伺いました。

医師になられたきっかけは?

わたくしが小学生のときに、祖父が脳内出血を発症しました。かなり大きな出血だったようで、手術できれば救命できたのでしょうが、当時の地元にはその手術を執刀可能な脳神経外科医がいませんでしたので、内科的治療のみが行われました。その結果、残念ながら祖父は他界しました。そのときの無念が、わたくしが医師を目指した最大の理由です。

将来医師になるべく、医学部入学を目指して受験勉強に励んでいた高校生時代に出会った漫画『スーパードクターK』(週刊少年マガジン掲載)が外科医を志望するきっかけとなりました。あらためてWikipediaで調べてみると、キャッチコピーが「ハードボイルド医学伝説」らしいです(笑)。卓越した手術技術をもった主人公のKAZUYAが、難疾患を抱える多くの患者さんたちを救っていく医学ドラマです。そのKAZUYAのライバルで後に親友となる朝倉雄吾が登場、KAZUYAをもって『天才脳外科医』と評されるとともに、『脳はもっとも複雑な臓器、それを扱う外科医にも最高の技術が要求される』というセリフに魅了され、さきの祖父の件での無念を晴らすためにも、数ある外科のなかでも脳神経外科医になりたいとの思いを強くしました。

現在研究している内容について

臨床家としてできうる限り患者さんへと還元できるようなテーマの臨床研究と基礎研究を推進しています。

臨床研究では、低侵襲手術法の開発に力を注いできました。他の外科系と同様に、脳神経外科においても手術の低侵襲化は大きな流れとなっています。ただし根治性が高い=長期にわたって再発しない手術であることも重要です。この低侵襲化と根治性を両立できる、そして一般化できるような手術法の開発を推進しています。

基礎研究では、従来より血液脳関門(BBB)モデルによるドラッグ・リポジショニング研究を推進してきました。これは、既存薬を当初想定していた疾患以外の中枢神経疾患に応用することを念頭に、そのBBBにおける作用を明らかにするための研究です。また、BBBと脳腫瘍組織、くも膜下出血動物モデルなどの血管内皮細胞におけるグリコカリックスの形態とその機能を解明するための研究を推進しています。これらの研究活動が、ひいては『血管制御による新たな治療法の開発』に繋がればと期待しています。

臨床研究と基礎研究、相互を行き来するトランスレーショナルそしてリバーストランスレーショナル研究の推進により、一人でも多くの患者さんの救済に繋がるよう、日々研究に励んでいます。

脳神経外科学教授としての抱負

教室員全員が夢と希望に満ちた『明るい未来予想図』を描ける、教室づくりを目指しています。

地方大学である岐阜大学の最重要の使命は、地域医療をしっかりと支えていくことにあります。岐阜県は広大であるがために、脳神経外科医療を津々浦々まで届けるには、多くの優秀な『人財』が必要です。幸いなことに、当科とその連携施設においては、脳腫瘍・脳血管障害などを中心として、高度な手術を提供できるメジャープレーヤーがすでに育っています。また、モチベーションの高い若手医師も多く、後継育成においてもその未来は明るいものと期待してます。大学病院の役割は、地域医療の最後の砦としての機能を担っていくことにあります。当県における脳神経外科医療の更なる発展のために、オール岐阜での教育体制の構築を推進したいと思います。

わたくしはこれまでに、世界各地において高難度の脳神経外科の手術ライブデモンストレーションによる術者教育に尽力してきました。執刀医として世界で貢献できる喜びを、国内外の若い脳神経外科たち、そしてそれに続く研修医・医学生の皆さんに伝承していきたいと思いますし、それがわたくしの使命であると考えます。

『岐阜から世界へ』を合言葉に、地域・日本そして世界で活躍できる人財育成により、岐阜大学脳神経外科学教室をもり立てていきたいと思います。

医師を目指す学生へのメッセージ

脳神経外科は、ヒトが生物として生きていくための司令塔である生きている『脳』とうい臓器に、直接触れることが許された唯一無二の分野です。『Time is brain.』という言葉が示す通り、そこに発生する病気の治療は、緊急を要することも多く、生命や後遺症に直結する疾患を扱うことも多い診療科です。大変なことも多い仕事ではありますが、その裏返しとして得られる『やりがい』も大きく、仲間のみんながプライドをもって活き活きと仕事に励んでいます。私自身も、「生まれ変わっても脳神経外科医になりたい!」というのが正直な気持ちです。

いつの日か、皆さんたちと共に、患者さんと向かい合う日々が来ることを、今から楽しみにしています!

略歴

平成7年 3 長崎大学医学部医学科 卒業
平成7年 5 長崎大学医学部 脳神経外科 研修医
平成7年 8 北九州市立八幡病院 脳神経外科 医員
平成8年 6 福岡記念病院 脳神経外科 医員
平成9年 6 公立みつぎ総合病院 脳神経外科 医員
平成10年 6 佐世保市立総合病院 脳神経外科 医員
平成11年 9 長崎大学医学部 脳神経外科 医員
平成13年 10 長崎大学医学部 脳神経外科 助手
平成14年 6 社会福祉法人十善会病院 脳神経外科 副部長
平成18年 4 長崎労災病院 脳神経外科 第2部長
平成20年 4 長崎労災病院 脳神経外科 部長
平成24年 6 長崎大学医学部 脳神経外科 助教
平成27年 4 長崎大学病院 脳神経外科 講師
平成27年 4 長崎大学病院 脳卒中センター 外科部長(併任)
令和2年 4 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座 脳神経外科学 准教授
令和6年 1月 岐阜大学大学院医学系研究科 脳神経外科学 教授



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