概要

VOICE~岐大医学部から~

退職教授からのメッセージ

生命関係学講座
疫学・予防医学分野
永田 知里 先生

『VOICE-岐大医学部から-』第137回は、令和7年3月をもって退職となった、医学部医学科 生命関係学講座 疫学・予防医学分野 永田 知里 先生にお話を伺いました。

教員生活を振り返って

当分野、疫学・予防医学の旧称は公衆衛生学教室です。公衆衛生には、地域住民の健康の保持・向上のための活動が幅広く含まれますが、私は公衆衛生の実践に携わるというより、疫学という方法論を用い、どういう生活習慣や環境が疾患発症に関わるかを研究してきました。研究で得られた知見から健康保持・向上を目指そうとするものです。特に食習慣と乳がんの関連、大豆イソフラボンの健康影響、女性ホルモンと健康、に関心がありました。これらは多くの方々に参加いただく調査研究で初めて明らかになるものであり、これまでに地域、病院、人間ドック、大学、小中高校、幼稚園での調査研究の機会を与えて下さり、感謝いたしております。疫学の方法論に従い、仮説を生み出し、それをより検証性の高い方法論で確かめていくプロセスは、学究的で楽しめました。大学院生と新しい課題に挑戦でき、エビデンスを積み上げてこられたこと嬉しく感じております。

次世代へのメッセージ

自分の好奇心や関心から、研究を続けて来ましたが、勢いニッチな課題に向かうことが多かったと思います。とにかくユニークでありたいと願い、学会等に出席した際には、発表を聞きつつ、これら主流とは異なる研究は何かばかり考えるのが癖になっていました。ところが、特に年を重ねると、最前線の研究者というより、他の研究者が実施する研究やプロジェクトの評価を任されるようになり、将来の研究はどうあるべきか、必要とされる研究課題は何かを考えざるを得なくなりました。昨今は、自分の興味だけで小さな研究に満足するわけにはいかず、より大規模なゲノムを含めたデータや連携組織の意義が高まっているようです。そのような研究は当然、社会へのインパクトも強いため、研究者の果たすべき使命も大きいと思われます。そんな大きな挑戦には、社会に積極的に関わる意欲や熱意が求められるのでしょう。研究者としての一家言と矜持を抱きながら、大局的思考を身につけて欲しいと思います。

略歴

1988年3月 岐阜大学医学部医学科卒業
1994年3月 岐阜大学大学院医学研究科博士課程修了
1996年6月 岐阜大学医学部助手
2000年 7月 岐阜大学医学部助教授
2005年8月 岐阜大学大学院医学系研究科教授


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