概要

VOICE~岐大医学部から~

消化器外科・小児外科学からのメッセージ

医学系研究科 外科学講座
消化器外科・小児外科学
教授 松橋 延壽 先生

『VOICE-岐大医学部から-』第126回は、令和4年9月に就任されました、医学系研究科 外科学講座 消化器外科・小児外科学 教授 松橋 延壽 先生にお話を伺いました。

医師になられたきっかけは?

子供の頃から漠然と、困った人を助けられる職業に就きたいと考えていました。医学部を目指すころには密かに、テレビや本で見た【赤ひげ】のように病に罹った人を親身になって診察し、皆に信頼される人間味溢れる医師になりたいと思っていたような気がします。医学部に入学し大学時代はサッカー部で毎日練習に明け暮れていましたが、その頃からなんとなく先輩の影響もあり、外科医になりたいと思うようになりました。そして大学時代の恩師に言われたことが今でも忘れることなく礎になっています。私の名前は延壽(のぶひさ)と言います。親はお寺の方に命名してもらったと名前の由来については教えてもらったことはありませんでしたが、あるゼミの授業中に"君は親に感謝しなさい、君は医師になるべくしてなるんだよ。とてもいい名前だよ。君の名、延壽は患者さんの寿命を延ばすという意味なんじゃないかな?そんな風になるようにと思い名前をつけてもらったんだからこれからも意識してこの仕事を全うしなさい"と言ってもらえたのです。それ以来、この言葉を意識しながら患者さんに接して仕事をしているつもりです。

現在研究している内容について

当科は以前より癌の研究を積極的に行ってきましたが、最近の癌ゲノム医療の発展は著しく、その中でも大腸癌領域は目覚ましい進歩を遂げています。われわれのグループであるSCRUM JAPAN GI groupから2021年【Nature Medicine】にリキッドバイオプシーの有用性研究を報告しました。今後はゲノム医療における大腸癌リキッドバイオプシー研究を当科から積極的に展開していく予定です。2023年3月から日本医療研究開発機構研究(AMED)として、全国9施設の中の1施設に採択され、この治療を治験として全ゲノム解析しながら治療を受けることができる施設になっています。さらに海外では直腸がんに対して手術前に抗がん剤と放射線をうまくコンビネーションさせた治療をすることで、約40-50%の直腸がんが消えるという結果が報告されるようになりました。当院と国立がん研究センター東病院などとの共同研究で、直腸がんの方のゲノム解析をしながら術前化学放射線療法を行い、患者さんにすでに提供しています。今後は患者さん個々に適切な医療が提供できる時代に向けて、われわれは着々と準備をしています。その他大腸癌に限らず消化器癌におけるリキッドバイオプシー研究も多数行っています。

消化器外科・小児外科学教授としての抱負

当教室は外科教室でありながら腫瘍学的知識を持ち合わせていることが最大の強みです。全国外科教室としては数少ない【ゲノム医療にも関わることができる重要な拠点病院】として岐阜地域のために発展していきたいと考えています。そのためには基礎医学は重要であると考えています。若い先生にはBasic Scienceをしっかり勉強してもらい、外科医として見識の深さの重要性を学んでほしいと思っています。足元をしっかり見つめて地道な研究を行い、岐阜から世界へ外科学の新たなエビデンスを発信できるよう、医局の先生たちと共に切磋琢磨しながら医学界に貢献したいと思います。また、地域医師偏在化に伴い、外科医不足も昨今大きな話題となっています。岐阜地域に求められる救急医療、緩和医療にもしっかり対応できる幅広い一般外科医はもとより、地域貢献できるジェネラリスト(General Surgeon)や各臓器における専門性の高いスペシャリスト(Special Surgeon)など、ダイバーシティの人材育成を目指していきたいと思います。

医師を目指す学生へのメッセージ

【医は仁術なり】という格言があります。病気を治すことにとどまらず、どんな患者さんにも思いやりを示すことが重要であるという意味です。令和の時代においては死語になっているかもしれません。しかし私自身は医師という仕事は聖職であり、素晴らしい職であることを信じていますし、誠心誠意、誠実に診療を行っている姿をみれば、自ずと患者さんは心を開き、心が通じ合えば必ず良い結果が生まれると信じています。病院に来られる患者さんは病気を治すため医師を頼って来ています。医師であることを誇りに思うことは重要ですが、傲慢になることのないよう常に真摯に患者さんには接してください。昨今、外科手術が目覚ましく進歩する一方で、医療事故・訴訟なども多くなってきています。医師として謙虚に常に患者さんのこと考え、目の前の患者さんにとって何が最も良い治療かを常に考えられる素晴らしい医師になってください。

略歴

平成 8年 3月
大阪医科大学医学部医学科 卒業
平成 8年 4月
岐阜大学医学部附属病院第2外科 臨床研修医
平成 9年 5月 岐阜県立岐阜病院外科 臨床研修医
平成 10年 4月 JA揖斐厚生病院外科 医員
平成 11年 6月
登豊会近石病院外科 医員
平成 13年 4月 岐阜大学大学院医学研究科外科系専攻博士課程 入学
平成 16年 3月
岐阜大学大学院医学研究科外科系専攻博士課程 修了(優秀論文3年で修了)
平成 16年 4月 岐阜大医学部附属病院高次救命治療センター 医員
平成 17年 3月 岐阜大学医学系研究科救急・災害医学分野 助手
平成 18年 7月 岐阜県総合医療センター外科 医長 兼 救命救急センター部長代理
平成 24年 1月 岐阜大学医学部附属第2外科 医員
平成 24年 4月 岐阜大学大学院医学系研究科がん先端医療開発学講座 特任講師
平成 25年 4月 岐阜大学大学院医学系研究科がん先端医療開発学講座 特任准教授
令和 元年10月 岐阜大学医学部附属病院消化器外科 准教授
令和 4年 1月 岐阜大学大学院医学系研究科消化器外科・小児外科学分野 准教授
令和 4年 9月 岐阜大学大学院医学系研究科消化器外科・小児外科学 教授



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