VOICE~岐大医学部から~
地域看護学分野からのメッセージ
医学部 看護学科
地域健康援助学講座 地域看護学分野
教授 三好 美浩 先生
『VOICE-岐大医学部から-』第97回は、2019年4月に就任されました、医学部 看護学科 地域健康援助学講座 地域看護学分野 教授 三好 美浩先生にお話を伺いました。
研究者になられたきっかけは?
此処に至るまで、たくさんの方々にお世話になってきましたが、私が研究者になることを決意したのは、恩師との出会いがあればこそでした。私が少年時代を過ごした北海道のローカルな生活では、情報といえば学校教育を通じて得られるものか、テレビや新聞で報道されるものが主であり、窮屈さを肌身に感じながら高校を卒業し、東京に出ました。当時、ローカルな生活の中で育った子どもがイメージできる職業というと、学校の先生、商店の小父さんや小母さん、農業をする人、お医者さんや看護師さん、飲食店の板前さんや女将さん、役所や銀行で働く人、警察官、消防士、時々見かける職人さんぐらいなもので、世の中にどのような仕事があるかさえあまり知りませんでした。そのような狭い了見で、大学生活を送り、努力を重ねる中、世間の広さや様々な仕事があることが分かってくるにつれ、自らの適性と職業選択を考えることが多くなりました。結局、大学院時代に恩師と出会い、研究者になる道を決意するに至るのですが、ある立ち位置から見た時、恩師が取り組んできたこと、当時研究されていたことが大事なことであると強く感じ、その根源を私自身が引き継ぎ、発展させていきたいと思ったからでした。そして、恩師から受けた学恩の重さを抱きながら、今もその可能性を考え、探し、試みているのです。
教員になられたきっかけか?
教育と研究は、学問を発展させるための両輪です。研究は、最先端で不確かな課題に取り組み、新しい成果を発見することであり、教育は、既に得られた成果の重要性を整理し、他者にそれらの成果が理解されるように伝えることです。異なる視点からこの両輪を見ると、学問とは、一代限りの研究のことではなく、一人の研究者を越えた人類の知恵として継承され、蓄積されていくものです。教育とは、人類の知恵の中から重要性の高いものを教えること、あるいは学ぶことであり、時には先達に続く新たな研究者を輩出することにつながります。私は、言葉の重さや責任を感じることが少なくない少年時代を過ごしたため、小中高の教員に就くという選択肢を早々に捨てました。その私が、大学の教員になったのは、大学院時代にこのような教育と研究への理解を得たからです。
どのような研究を行っていますか?
恩師の下で、人間への理解において、個人、集団、組織、時代といったものをどのように表わすことが公正であるか、その方法として調査法や統計学をどのように使うことが可能なのかという大きな課題を認識し、その後私の研究基盤となりました。この基盤の上に、現在中心的に取り組む青少年の喫煙、飲酒、薬物乱用とライフスタイルに関する研究があり、これまで取り組んできた他の研究があります。また、人の状態や人の意見を公正に表わすということは、私の研究では、対象としている人全員(母集団)において、特定の個人がどのように位置づけられるかを紐解くことになります。現在は、全国高校生、関東地域の18-22歳の日本人における喫煙、飲酒、薬物乱用研究を通じて、青少年を理解し、青少年が持つ可能性を拡大することを目指しています。その際に、青少年を煽動するのではなく、過大評価あるいは過小評価するのでもなく、あるがままに現状をデータに表わし、そのデータから出発する対策へとつなげていくことを大切にしています。これを実現するために、統計的標本調査法や種々の統計解析手法を使いこなせる必要があり、疫学、看護学、医学を含む、幅広い知識をアップデートし続けながら、研究を積み重ねています。
看護師・保健師・助産師・養護教諭を目指す学生へのメッセージ
迷わない人は幸いであるのかもしれません。しかしながら、大いに迷いながら歩んできた私が言えることは、まずやってみること、そして精一杯やってみること、その先に道は拓かれていくでしょう。学生の皆さんは、人と出会い、経験を積み重ねることで、自分自身を知り、生きる道を獲得していってください。また、合理あるいは功利だけでは、排除されるものや置き忘れられるものが生じます。だからこそ、個人が実力を高める必要があり、高い実力があるから自己中心的な合理や功利を越えて、自分のためではなく、自分たちのためにあるいは誰かのために力を発揮できるのです。私自身も、努力する学生の志に誠実に応えられるよう努めていきます。看護師・保健師・助産師・養護教諭を目指す学生の皆さんの未来に期待します。
略歴
1996年 | 芝浦工業大学工学部建築学科 卒業 |
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1998年 | 芝浦工業大学大学院工学研究科建設工学専攻修士課程 修了 |
2002年 | 拓殖大学大学院工学研究科工業デザイン学専攻博士後期課程 修了 |
統計数理研究所領域統計研究系 研究機関研究員 | |
2003年 | 統計数理研究所領域統計研究系 研究機関研究員 |
2004年 | 文化女子大学文化・服装学総合研究所 研究員 |
統計数理研究所領域統計研究系 技術補佐員 | |
2005年 | 統計数理研究所データ科学研究系 技術補佐員 |
兵庫教育大学教育・社会調査研究センター 研究補佐員 | |
兵庫教育大学教育・社会調査研究センター 学術研究員 | |
2007年 | 兵庫教育大学教育・社会調査研究センター 助手 |
兵庫教育大学教育・社会調査研究センター 助教 | |
2010年 | 日本性教育協会 研究員 |
2011年 | 岐阜大学医学部看護学科 准教授 |
2019年4月 | 現職 |