VOICE~岐大医学部から~
循環病態学分野からのメッセージ
医学系研究科 病態制御学講座
循環病態学分野
教授 大倉 宏之先生
『VOICE-岐大医学部から-』第96回は、2019年1月に就任されました、医学系研究科 病態制御学講座 循環病態学分野 教授 大倉 宏之先生にお話を伺いました。
医師になられたきっかけは?
どのような研究を行っていますか?
心エコー図や心臓カテーテル検査時の血管内イメージングを用いた、心疾患の病態解明をテーマに研究を行ってまいりました。経胸壁心エコー図でプラニメトリー法によって大動脈弁口面積が評価可能であることを明らかにしました。本法は今では教科書やガイドラインにも記載され世界中で用いられています。血管内イメージングの代表的なものに、血管内超音波(IVUS)と光干渉断層法(OCT)があります。IVUSではattenuated plaqueやperi-medial high echoic band (PHB)といった所見を提唱し、これらがカテーテルインターベンション後の血管反応を予測するうえで有用であることを示しました。また、integrated backscatter(IB)解析を併用することによって、冠動脈の組織性状を診断することが可能であることを示してきました。OCTはIVUSよりも高解像度な画像診断法で、冠動脈の不安定化を診断するのに有用であることを示しました。今後は、IVUSとOCTのハイブリッドカテーテルが使用可能となります。両者を組み合わせることによってより精度の高い診断が可能となるものと期待されています。第二内科では基礎研究の分野においても世界的な成果を上げてまいりました。現在取り組んでいるテーマの一つが、生体内多能性幹細胞Muse細胞(multilineage-differentiating stress enduring cell:ミューズ細胞)です。Muse細胞を静脈内投与すると、急性心筋梗塞組織に選択的に遊走・生着し、機能的な心筋細胞に自発的に分化し、心筋梗塞サイズの縮小と心機能の回復がもたらされることが動物実験により示されました。現在は、臨床応用を目指して、急性心筋梗塞例に対する臨床試験を行っているところです。
教室をどのようにもり立てて行きたいですか?
私たちの教室の特徴は、多様性にあると思っています。第二内科は循環器、呼吸器、腎臓という相互に関連しあう重要な臓器を扱っています。2018年から新内科専門医制度に向けて新しく内科専攻医の登録が始まりました。私たちの教室で内科専攻医として研鑽を積んでいただければ、内科各領域の経験を積みながら循環器、呼吸器、腎臓内科それぞれの専門分野についても早い時期から研鑽を積むことができますので、まさに新制度にもってこいの素晴らしい環境だと思います。やる気のある若い先生たちには、身体所見や心電図、心エコー図といった基本技能から、心臓カテーテル検査、経皮的冠インターベンションからカテーテルアブレーションといった専門的な手技まで幅広く経験してもらい、"総合"循環器内科医となってもらいます。そのうえで、さらに専門技能を極める、研究に邁進する、実地医家として地域医療を支える等、それぞれの道にむかって教室員皆が大きく羽ばたいていってほしいと願っています。
医師を目指す学生へのメッセージ
医師は大変やりがいのある仕事ですが、その分責任も重大です。単なる知識や技術だけではなく、社会性、人間性をたかめて、医師という仕事を目指してください。私たちは全力でそのお手伝いをいたします。
略歴
1989年 | 奈良県立医科大学医学部 卒業 |
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天理よろづ相談所病院 ジュニアレジデント | |
1991年 | 兵庫県立尼崎病院循環器内科 専攻医 |
1992年 | 神戸市立中央市民病院循環器センター 内科専攻医 |
1995年 | 神戸リハビリテーション病院 内科医員 |
1998年 | スタンフォード大学 研究員 |
2000年 | 生長会府中病院循環器科 医長 |
ベルランド総合病院循環器科 医長、循環器内科 部長 | |
2005年 | 川崎医科大学附属病院循環器内科 助教授、准教授 |
2015年 | 奈良県立医科大学第1内科 准教授、循環器内科 准教授 |
2019年1月 | 現職 |