概要

VOICE~岐大医学部から~

医学部附属病院長からのメッセージ

医学系研究科 腫瘍制御学講座
腫瘍外科学分野
教授 吉田 和弘先生

『VOICE-岐大医学部から-』第92回は、平成30年4月から医学部附属病院長に就任された、医学系研究科 腫瘍制御学講座 腫瘍外科学分野 教授 吉田 和弘 先生にお話を伺いました。

病院長としての抱負と構想

この度、2018年(平成30年)4月1日より岐阜大学医学部附属病院長を拝命いたしました岐阜大学腫瘍外科学教室の吉田和弘と申します。歴史と伝統を持った本学の東海地区での最先端の医療、研究、教育における果たす役割を鑑みると、大変光栄であると同時に、その責任の重さに身の引き締まる思いでございます。これまで岐阜大学へご貢献されてきた多くの諸先輩方のご功績に加えて、さらなる発展を目指し、全身全霊をかけて努力する所存でございます。岐阜大学関係諸先生方に置かれましては、よろしくご指導ご鞭撻のほど、この場をお借りしお願い申し上げます。
 
私は、1984年(昭和59年)に広島大学医学部を卒業致しまして、癌の外科治療および研究に興味があり、広島大学原爆放射線医科学研究所腫瘍外科に入局致しました。「癌を形態だけでなく分子のレベルで理解出来る外科医でありたい」という思いで学位を頂き、一貫して消化器癌・乳癌を中心に、診療・研究・教育に従事させて頂いておりました。この間、英国オックスフォード大学に留学させて頂き、広い視野に立って物事を見わたす機会をいただくことが出来ました。
 
2007年(平成19年)8月1日より現職の岐阜大学腫瘍外科学分野の教授として赴任いたしました。岐阜大学医学部附属病院がんセンター長を拝命し、また副病院長として貢献する機会もいただきました。教室では、1.低侵襲治療の開発、2.機能温存手術の開発、3.がん集学的治療の開発、4.臨床研究による新たな治療の開発、をテーマに多くの実績を上げることができました。この10年間で全国規模の臨床研究170プロトコールと治験31テーマをこなすことができ、全国レベルの主任研究者(P.I.)として7つの試験を担当し、AMEDからの資金も獲得する機会をいただく事ができました。岐阜大学の臨床研究で、ASCO(Best of ASCO 獲得)やESMO(Best of ESMO獲得)でのLate breaking abstract としての発表などの機会をいただき、JDDW2017第15回日本消化器外科学会大会での大会長や2019年第57回日本癌治療学会学術集会会長も拝命することができました。これもひとえに岐阜大学関連の先生方からのご支援や患者さんのご協力の賜であると、この場をお借りして重ねてお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
さて、高齢化が進むわが国においては、地域の中での機能分化と連携強化の推進が基本方針となりました。岐阜大学医学部附属病院は「社会と医療のニーズに応える病院作り」を目指したいと思います。特に安心・安全を基盤として特定機能病院として最先端の医療の提供と同時に、地域に密着した病院「患者さんやそのご家族に、大学病院に来てよかった」と思ってもらえるような病院としてその役割を果たすことがその使命であると考えます。具体的な施策として下記の4つを挙げてみました。
 
1.地域医療機関との連携中核病院
 
2.先端医療と臨床研究を推進し、新たな標準治療を創成する病院
 
3.Global and local leadershipを担う人材育成のできる病院
 
4.職員にとって働きやすく「来てよかったと」患者さんに思ってもらえる病院  
 
地域の医療機関との連携中核病院としてその役割を果たすことは、病院経営や医療安全を推進する上で極めて重要であると考えます。5疾病5事業のさらなる推進と地域医療構想の中での地域医療の中核的存在として、専門的な内科診療(消化器・循環器・糖尿病・脳卒中・膠原病・神経疾患)や外科系医療、放射線診断治療・化学療法、周産期・小児医療・精神疾患のさらなる成長戦略が、専門施設実現のためのキーワードであるかと考えます。これらの基盤となるのが高次救命センターで救急患者さんの受け入れ体制を充実させることで、医療連携の機能充実を図ります。チーム医療の充実や職員教育、顔の見える連携を第一線の先生方と実現できれば幸いです。すなわち、「地域の関連の先生方のクリニックが当院の外来である」というような関係が樹立できればと存じます。
 
先端医療と臨床研究を推進し、新たな標準治療を創成する病院であることは、今後の岐阜大学病院の取るべき基本指針として、私は本件を最も重要な成長課題と位置付けます。特に医学部・他学部との連携の強化や国際連携は極めて重要です。先進医療と臨床研究の推進は、先端医療・臨床研究推進センターのさらなる充実を目指します。Translational Research の推進には、医・薬・獣の学部間連携、加えて、ゲノム医療の充実による Precision Medicine への拡充が時代の流れとして必要不可欠です。外部資金の獲得はこれらを実現していく上での試金石となるでしょう。
 
Global and local leadershipを担う人材育成のできる病院であることは、岐阜大学の基本方針の一つです。先進社会のプレーヤーとなり得る人材こそ地域に貢献できる人材であり、専門医、専門看護師、専門薬剤師、専門理学療法士・放射線・検査技師、専門栄養士、高質の医療事務部を育成することが未来型の大学病院に必須であると考えます。そのためには、国際共同研究の推進として、日・中・韓のみならず、アメリカやヨーロッパの大学間の人事交流や共同研究を推進します。医師のみならず、学生やメディカルスタッフの交流は、さらに地域の活性化につながるでしょう。新専門医制度の中での医師確保や看護師薬剤師など多くのメディカルスタッフの確保にもつながるでしょう。
 
職員にとって働きやすく「来てよかったと」患者さんに思ってもらえる病院を目指すことは、医療を提供する施設としての基本であると考えます。より良い医療の提供・医療福祉と患者サービス・接遇をさらに充実させることが重要です。大学病院の提供する医療の充実には、職員の福利厚生、健康管理、女性職員が勤務しやすい職場作り(出産・育児支援)やキャリア支援・働き方改革への取り組みなどが極めて重要であると考えます。一方、患者サービスや各疾患患者の連携・就労支援、ピアサポーターやがん医療ナビゲーターなどの育成も時代を先取る戦略と考えます。今、岐阜大学医学部附属病院の更なる発展のためには、岐阜大学に誇りを持ち、学長の指揮の下、全職員が思いを一つにして、成長戦略(発展的・挑戦的運営)を掲げることが肝要であると考えます。
 
岐阜大学医学部附属病院は、岐阜地域の基幹病院や第一線でご活躍の開業医の先生方と手に手を取って医療を通じた社会貢献に寄与できますよう努力する所存でございます。先生方におかれましては、よろしくご指導ご鞭撻いただけますよう心よりお願い申し上げます。

略歴

1984年 広島大学医学部 卒業
広島大学原爆放射線医科学研究所外科 入局
1985年 松山赤十字病院外科
1990年 広島大学大学院外科系専攻 修了(医学博士)
広島大学医学部第一病理学 助手
1991年 広島大学原爆放射線医科学研究所外科 医員
1992年 広島大学原爆放射線医科学研究所外科 助手
1994~1996年 英国オックスフォード大学ジョンラドクリフ病院留学
2002年 広島大学附属病院(原医研)講師
2007年 岐阜大学大学院医学系研究科腫瘍制御学講座腫瘍外科学分野 教授
2008年 岐阜大学医学部附属病院 がんセンター長
2010年 岐阜大学医学部附属病院 副病院長
2012年 青島大学医学部附属煙台病院外科・教授(併任)
2018年 4月より現職



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