概要

VOICE~岐大医学部から~

基礎看護学からのメッセージ

医学部 看護学科
基礎看護学講座
基礎看護学分野
教授 竹下 美惠子先生

『VOICE-岐大医学部から-』第70回は、2015年4月に教授に就任されました、医学部 看護学科 基礎看護学分野 教授 竹下 美惠子先生にお話を伺いました。

看護師になられたきっかけは?

女性でも生涯職業をもって社会で働きたいという思いがあり,当初は学校の先生になろうと思っていたのですが,高校時代の適性検査で医療職の方が適性にあっているのではないかというアドバイスを受け,いろいろと考えた結果,人と関わる仕事も嫌いでは無かったので,看護師になろうと,そこで初めて決定したという感じです。
看護師になって,最初は,自分は向いているのか,なんていう迷いもありました。自分はこのままやっていけるのかな,って。OLさんになろうかなって思っていた時もありました(笑)。
3年ぐらいたって,だんだん慣れて,生涯自分が働くにはいい仕事と思えるようになりました。看護師というのは,病気の方をお世話するのですが,これまでいろんな人生を送ってきた方が病気になって入院されてくるわけです。病気に向かう時って,その方の生き様っていいますか,その人の本当の姿が出るように思います。一番弱い時なので,本音が出るといいますか。どんなに社会的な地位が高くても,病気になって混乱される方とか,逆に,人生を達観して冷静に振る舞っておられる方とか,その方の生きてきた姿が出ます。そんな方々の姿からすごく生き方を学ばせて頂きました。
私が看護師として働いていた頃は,看護師不足の時代で,今も忙しさは変わらないかもしれないですが,当時は夜勤も多かったです。夜,重傷患者さんがいらっしゃると,夜勤に出るのにもし何かあったら対処できるのかなと思うと不安で胃が痛くなりました。自分が異常のサインを見逃してしまったら,患者さんの命に関わるわけですから。特に夜になると相談できる人が少なくなるので,すごく不安でしたね。でもなんだかんだといいながら,10何年も続けたのは臨床に面白さを感じていたからだと思います。

教員になられたきっかけは?

今思えば当初の希望でもあった学校の先生になったわけですけれども(笑),本当に偶然でした。看護学校時代の同窓会に恩師の先生に来て頂きました。その先生が当時,新設の学校の責任者として赴任されており,教員不足であるということでお誘いを受けました。恩師は活き活きと教育に携わられており,後輩を育てるというのも立派な仕事ではないかとおっしゃいました。私は現場が好きでしたので看護師を辞め臨床を離れることをすごく迷いましたが,夜勤で家族に負担をかけていたこともあり,教員を体験してみようかな,と思いました。
臨床心理学を勉強したのは,自分自身も看護師として非常にストレスを抱えていた時もありましたし,ストレス関連性の疾患の患者さんにとっては,心の状況 がすごく影響しますので,心と体をセットで見ていくような,そういう看護ができたらいいなと思ったからです。病気だけではなく,患者さんの精神面,置かれ ている状況,患者さんが普通の生活に戻っていくために,等々,多方面から見ていくのが看護です。臨床心理学で学んだことが患者さんの理解にとても役立ちま した。

どのような研究を行っていますか?

私の最近の研究におけるキーワードの一つとして,「共感疲労」というものがあります。病気で大変な人の思いに共感する,相手の痛みを汲んで関わっていくというのは,看護職の感性としてはとても重要です。ですが,共感し過ぎてくたびれてしまう,というのが共感疲労です。最近の研究だと,東北の震災の医療に携わった看護師の中にそういう例が多いという報告もあります。看護師は共感疲労が起こりやすい職種なので,それを予防するような,自分の心との向き合い方を認識していないと,仕事が続けられなくなってしまいます。看護職は残念ながら,ストレス度が非常に高い職種といわれますが,そのストレスを乗り越えて成長するということが必要です。「ストレス関連成長」といって,ストレスがあるからこそ成長できる,という考え方です。ストレスを乗り越えるだけのなんらかの要因,気持ちの上での切り替え,それを強みに変えるような力・気質が報告されています。そういう力・気質をトレーニングによって強化することができるという報告があります。どういうトレーニングをすればよいのか,どのように気持ちを切り替えればいいのか,というところが研究のテーマです。
さらに,基礎看護学の担当教員として基礎看護技術を担当しています。臨床で求められる看護技術力を身につけられるような教育方法を担当教員チームで研究に取り組んでいます。

看護師・助産師を目指す学生へのメッセージ

昔は優しくて,そばにいてくれるだけで安心する看護師さんがいいと考えていましたが,最近はそれではダメだと思っています。医療が進歩し,患者さんが超高齢化かつ重症度が高くなっていますので,異常をすぐに察知できるような知識や技術が必要です。知識・技術が伴わないと患者さんの命を守れないということが起きてしまいます。「生涯勉強する」それが誠実に患者さんに向き合うことですし,自分の職業に向き合うことだと思います。だから,半端の気持ちではやっぱりできません。半端な気持ちなら辞めて欲しい(笑)ぐらいの気持ちを抱いています。半端な気持ちで取り組まない,技術もしっかり磨いていく,ある意味厳しいかもしれないですけど,厳しくて当然の職種だと思っています。ですから教員も気合いを入れて教育に臨まないといけません。看護師は,生涯働く上では,人生経験が看護に活かせる有意義な仕事だと思っています。受験生の皆さんが社会貢献したいとよくいわれますが,結局,自分が本当に職業人として満足感が持てるかだと思いますので,生涯の職業としては悪くはないと思っています。

略歴

1977年 名古屋赤十字看護専門学校 入学
1980年 名古屋第一赤十字病院看護師 採用
1996年 佛教大学社会学部応用社会学科 入学
2004年 学校法人研伸学園 愛知きわみ看護短期大学 採用
2008年 金城学院大学大学院博士課程・後期課程人間生活学専攻(博士課程)
2012年 岐阜大学医学部准教授(基礎看護学)
2015年6月 現職



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