概要

VOICE~岐大医学部から~

口腔外科学分野からのメッセージ

医学系研究科 感覚運動医学講座
口腔外科分野
教授 山田 陽一 先生

『VOICE-岐大医学部から-』第122回は、令和3年11月に就任されました、医学系研究科 感覚運動医学講座 口腔外科分野 教授 山田 陽一 先生にお話を伺いました。

口腔外科学及び口腔外科の紹介

食事を味わって美味しく食べることは、人生の大きな楽しみです。口から美味しく食べるためには、咀嚼、唾液の分泌、味覚、嚥下など多くの口腔機能が関わっています。また、口腔機能の恒常性を維持することは、Quality of life(QOL)向上、脳の活性化、健康寿命延伸の観点からも重要であるとされています。口腔外科学はこの口から食べることのもととなる口腔を構成する組織、器官ならびに口腔機能に関連する器官(歯・顎・口腔)に生じるさまざまな疾患を対象とした診断・治療・予防を行う学問です。対象疾患の主なものとして、口腔に生じる良性/悪性腫瘍や外傷、顎変形症、歯に起因する炎症性疾患、口腔乾燥症や舌痛症などがあります。また、当科では歯周病などで歯や歯槽骨を失った口腔機能回復のための骨造成・インプラント治療にも力を入れています。一般歯科では抜くことが難しい親知らずを抜歯するために口腔外科を受診した方も多いと思います。近年、この抜いた歯の神経(歯髄)に存在する幹細胞を用いた再生医療が注目されています。口腔領域は再生医療の臨床応用が実践されている分野でもあります。

現在研究している内容について

研究に関しては、顎顔面口腔組織再生、再建を柱として、常に臨床へと繋がる先進的医療の開発を目指しています。再生医療は細胞、生理活性物質、足場により組織を再生する医療で、iPS細胞の発見により飛躍的に認知されました。この再生医療にいち早く着目し、これまでに顎骨・歯槽骨再生医療を前臨床研究から臨床応用し、良好な結果を得てきました。今後は岐阜大学において、細胞を用いた低侵襲な新規骨再生療法を臨床応用していく予定です。抜歯した歯の神経(歯髄)から得られる歯髄幹細胞は、脊髄損傷、虚血性疾患、糖尿病等に対しても有用性が示唆されていますので、様々な分野と連携、協力し、細胞デリバリーシステムの構築も視野にいれ、細胞治療を普及させたいと考えています。また、悪性新生物、つまりがんは依然として国民死亡原因の1位を占めており、当分野でも、手術療法に加え、免疫療法など最先端医療の臨床への応用など、根治に向けた研究を推進していきます。研究のための研究に終わることなく、基礎研究、Evidence-Based Medicine(EBM)に基づき、トランスレーショナルリサーチ、リバーストランスレーショナルリサーチを進める所存です。そして、安全かつ効果的で、低侵襲な先進的医療開発等に努め、患者貢献をしたいと思慮しています。また、将来「歯」を再生し、美味しくいつまでも自分の歯で、しっかり食べられるような時代となるよう夢見ています。

口腔外科学分野教授としての抱負

「全身の健康はまずは口腔から」をモットーに、口腔領域から医科領域へと貢献できればと考えています。時には再生医療などにより、先端的医療を展開したり、時には周術期における口腔管理により全身疾患への危険性を軽減したり、QOL向上に向け、様々な科の先生方と協力、連携し、貢献したいと考えております。当分野では、人と人の繋がりを第一に考え、個々がその特性を生かして成長し、人間的に優れた医療人となることを目指しています。また、リサーチマインドを兼ね備えた教室員を育成して、先進的医療を開発・臨床応用し、岐阜大学医学部、地域医療のさらなる発展に尽力したいと考えています。臨床面では、歯科・口腔外科の基礎知識、技術の習得のみならず、専門医・指導医を育成し、体系立てて学修できるように指導することにより、臨床に卓越した教室員の育成にも努めたいと思います。教育・臨床・研究面から教室を活性化し、微力ながら、歯科・口腔領域から全身疾患改善に向けて貢献できるように励みます。そして、先進的医療を含めた高レベル医療を提供できるグローカル人材を養成し、地域住民・医療者から信頼される教室作りに邁進します。
また、国立大学法人東海国立大学機構として、名古屋大学医学部口腔外科との共同研究などを通じて、研究力強化に努めたいと考えています。

医師を目指す学生へのメッセージ

現在社会では、情報が錯綜し、得てもすると殺伐とした社会にも感じられる時代とも言われていますが、医は仁術と言われるように、患者さん目線で治療にあたり、患者さんに寄り添える、真心あふれる医師になって頂きたいと思います。岐阜は織田信長ゆかりの地でもありますので、信長が「理想を掲げ、信念をもって生きよ。理想・信念を無くしたものは、(戦や人生に)戦う前から負けている。」と申したように、医師として、高い志を持ち、何事にも挑戦していくことで、夢を持ってこれからの人生、楽しみつつも、challengeし、謳歌してください。そして、広く世界に目を向け、様々な経験を進んで積むことにより、大きな器を持った人として、成長してください。また、よりよい医療を追求して日々努力することを惜しまず、地域医療の発展にも貢献していけるよう頑張ってください。常に向上心を忘れず、成長する持続可能な医師としてSDGsを持ち、人情味あふれる、心温かい医師となられていくことを期待しています。私もそのような医療人となれるよう日々研鑽を積みたいと思います。

略歴

1995年
大阪大学歯学部卒業
1999年
名古屋大学医学部附属病院 歯科口腔外科 医員
2002年 名古屋大学医学部附属病院 遺伝子再生医療センター 助教
2008年 名古屋大学医学部附属病院 院内講師
2011年
University of California San Francisco 客員准教授
名古屋大学医学部附属病院 客員研究者
2012年
愛知医科大学 医学部 歯科口腔外科 講師
愛知医科大学 医学部 歯科口腔外科 准教授・副部長
2017年 東京大学医科学研究所 非常勤講師
2018年 大阪歯科大学 歯学部 口腔インプラント学講座 准教授
2021年11月 現職



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