VOICE~岐大医学部から~
医学部看護学科長からのメッセージ
医学部 看護学科
地域健康支援看護学講座
基礎看護学分野
教授 竹下 美惠子 先生
『VOICE-岐大医学部から-』第117回は、令和3年4月から医学部看護学科長に就任された、医学部看護学科 基礎看護学分野 教授 竹下 美惠子 先生にお話を伺いました。
看護学科長としての抱負と構想
私は岐阜大学医学部看護学科基礎看護学分野に着任し、本年度で10年目を迎えました。これまで看護職のキャリア発達を促進するストレスマネジメント等を研究テーマとしてきました。自分にとって節目の年に看護学科長という大役を拝命し、身の引き締まる思いです。この10年間、岐阜大学は変革を続け、特に令和2年4月に岐阜大学と名古屋大学の法人統合により東海国立大学機構が始動したことが大きな出来事です。岐阜大学医学部の一学科として看護学科も変革の流れに乗じ、より良く変わることを目指したいと思っています。
わが国はこれまでに経験したことのない少子高齢社会に突入しています。そのため、人口及び疾病構造の変化に応じた、適切な医療提供体制の整備が必要となっています。国は「時々入院、ほぼ在宅」をスローガンに医療の場は病院から地域へと広がっています。病院では医療職者主体であった医療が、在宅では生活者である人々が主体となるよう医療職者は黒子のように支える存在となります。これらの変化に合わせて、対象のケアを担う看護職の就業の場も、医療機関に限らず在宅や施設等へと拡がっています。どの場所においても多職種と連携し、看護が大切にしてきた生活者として人をとらえ、個別性に合った安心・安全なケアを提供することがますます期待されていると考えます。また、今まさに直面している新型コロナ感染症の感染拡大は、医療・介護分野においてAI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)等の情報通信技術(ICT)の導入に拍車をかけていますので、看護職もICTを活用する知識・技術を持つ必要があります。看護職は社会の期待に応えるべくより高い看護実践能力が求められており、文部科学省、厚生労働省の共同省令である国家試験受験資格に関わる保健師助産師看護師学校養成所指定規則(以下、指定規則)が改正され、看護学科でもカリキュラム改正を進めています。
看護学科では学部教育において看護師と、選択制で保健師または助産師の国家試験受験資格が得られるコースがあります。本学科は岐阜県唯一の国立大学として、次世代を見据え地域の人々の健康寿命の延伸のため、グローバルに考えながらローカルに、さらにローカルに仕事をしながらグローバルな発信ができる看護職の育成、看護職のリーダーとして看護の質の向上に貢献できる人材の育成を目指しています。そのため、我々教員も国家資格に関わる指定規則を鑑みながらも、岐阜大学の独自性を追求し、日々新しい学術研究の知見をもとに教育内容や教育方法を探求する努力を怠ってはならないと考えています。東海国立大学機構となったのを機に、本学科と名古屋大学保健学科看護学専攻で看護学教育・研究の質の向上に向けて連携をスタートさせています。
看護学科のホームページには「人を愛し、命を尊び、すべての人々の健康の向上に寄与する看護職を育てます」と掲げています。「人を愛すること」について心理学者エーリッヒ・フロムは、一番基本となるのは「配慮」であるとしています。「配慮」とは相手の気持ちや立場を考えること、即ち他者に対する気遣いのことで看護職自身の豊かな人間性に基づくものといえます。岐阜大学では1つのキャンパスに多くの学部が集まった総合大学で、質の高い教養教育を受けられます。看護の対象は幅広い年代で様々な人生を生きている生活者であり、多様な人々を理解するには、看護学だけにとどまらず多くの学問を学ぶことが大切と考えています。近代看護の祖であるフローレンス・ナイチンゲールが述べている普遍的な看護の根幹にかかわるものと考えます。
一方で看護は実践の科学であり看護の対象に安全・安心なケアを提供するには、確かな知識と技術による実践に他なりません。看護学教育では実習を重視し、学内で学んだ知識・技術を実習で統合していきます。本学科でも1年次から4年次にかけて様々な段階、様々な専門分野の臨地実習を展開しており、岐阜大学医学部附属病院をはじめ、専門領域の実習目的に応じた様々な医療機関や施設にお世話になっています。実習では臨床の看護職をロールモデルとし看護の対象の方々とのコミュニケーションを通して、看護に関わる専門職としての姿勢や意識を身につけていきます。
一昨年からの新型コロナ感染症の拡大は、看護職にとっても多くの苦難でした。また、我々教育・研究に携わる者にとっても、教育内容・教育方法を考え直し新たな研究テーマの示唆を得るものでした。「ピンチをチャンスに」をモットーに看護学科の教職員に協力を得て課題に取り組んでいきたいと思っております。今後ともご指導、ご鞭撻をよろしくお願いいたします。
略歴
1980年 | 名古屋赤十字看護専門学校 卒業 |
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名古屋第一赤十字病院 看護師 | |
1995年 | 医療法人桂山会 中部看護専門学校 専任教員 |
2000年 | 佛教大学社会学部応用社会学科 卒業 |
2004年 | 愛知教育大学大学院教育学研究科学校教育臨床専攻(修士課程) 修了 |
学校法人研伸学園 愛知きわみ看護短期大学 成人看護学 講師 | |
2007年 | 学校法人研伸学園 愛知きわみ看護短期大学 基礎看護学 准教授 |
2010年 | 学校法人研伸学園 愛知きわみ看護短期大学 基礎看護学 教授 |
2011年 | 金城学院大学大学院博士課程・後期課程人間生活学専攻 修了 |
2012年 | 岐阜大学医学部看護学科 基礎看護学講座 准教授 |
2015年 | 岐阜大学医学部看護学科 基礎看護学講座 教授 |
2021年 | 4月より現職 |