概要

VOICE~岐大医学部から~

退職教授からのメッセージ

医学系研究科 医療管理学講座
医学教育学分野
教授 鈴木 康之 先生

『VOICE-岐大医学部から-』第114回は、令和3年3月をもって退職される、医学系研究科 医療管理学講座 医学教育学分野 教授 鈴木 康之 先生にお話を伺いました。

教員生活を振り返って

私は1980~2001年の21年間を小児科で、2001年からの20年間を医学教育開発研究センター(Medical Education Development Center: MEDC)で過ごしました。小児科1年目はことのほか思い出深く、小児科時代を運命づける患者さんとの出会いが多くありました。先天代謝異常症の研究に没頭し、それが小児科医としてのアイデンティティにもなりました。1990年代は岐阜大学医学部で医学教育改革が進み、この時の教員としての経験がMEDCでの活動の基盤になりました。MEDCに移籍してから常々意識していたことは、"全国共同利用施設としての責任を果たす"、"医学教育者として自己研鑽する"、"医学教育の研究に挑戦する"、"医学教育分野の若手を育てる"、"小児科に恩返しする"でした。医学教育における私のアイデンティティは何か?と問われたら、自信はありませんが"医学教育の普及者・研究者です"と答えたいと思います。小児科の研究と医学教育の研究は随分毛色が異なり、試行錯誤を繰り返してきましたが、2020年度に我が国初の医療者教育学修士課程を開設する事ができ、"教育も研究対象である"という文化の種を少しは蒔くことができたのではないかと思っています。41年間を振り返ると、その時々に多くの皆様の支えと導きがあったと痛感します。心から感謝申し上げます。

次世代へのメッセージ

高校時代、私にとって医療は未知の世界であり、医学部入学後も、自分は話し下手だし、臨床医が務まるだろうかと常に不安を感じていました。基礎研究をしようかと真剣に思ったり、一方、臨床医になるからには何でもできるようになりたい、という気持ちも強くありました。小児科医時代に多くの患者さんを受け持たせていただきましたが、覚えているのは苦い経験ばかりです。幼い患者さんの臨終の場に耐えきれず病室から飛び出したこと、挿管ができずに先輩に代わってもらったことなど、数え上げればキリがありません。それでも周りの先輩が辛抱強く育ててくれて今の自分があるのだと痛感し、自分もそうありたいと思ってきました。もう一つ確実に言えることは、自分の言動はすぐ忘れてしまうが、相手(後輩)はとてもよく覚えているということです。後輩と話をしていてヒヤッとさせられる事はしばしばあり、自分の言動に注意しなければといつも自戒しています。医学・医療は日々進歩しており、教育法も年々進化していますが、良い同僚・先輩・後輩に感化され(時には反面教師からも学び)、自ら育っていくのが医療人としての成長(学習)の本質なのだろうと思います。医療という大切な仕事を維持発展させる次世代の皆さんに期待するとともに、自分も生涯学習を続けていきたいと思います。

略歴

専門は医学教育学、小児科学、先天代謝異常症
1983年 岐阜大学医学部卒業
同 附属病院小児科研修医
1981年 高山赤十字病院小児科
1982年 北里大学医学部小児科助手
1983年 岐阜大学医学部小児科助手
1989年 同 附属病院小児科講師
1996年 同 小児科助教授
2001年 同 医学教育開発研究センター教授
2005年 同 センター長(~2015)
2021年3月 退職

学会役員

 日本医学教育学会 理事長(2016~2020)、監事
 日本小児科学会 代議員
 日本先天代謝異常学会 理事、監事
 日本シミュレーション医療教育学会 理事
 日本ムコ多糖症研究会 代表幹事
 日本小児医学教育研究会 幹事

受賞

 日本先天代謝異常学会 学会賞(2009)
 日本医学教育学会 医学教育賞日野原賞(2015)



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